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「エブリシング・ストア」に突き進むAmazonが目指す「未来」とは?

2017.01.22  Wrote by Takuro Nakayama

(画像参照:http://thenextweb.com/

 

2016年12月初旬から始まるAmazonの一連のニュースリリース。

この1ヶ月の全てのAmazon関連ニュースのインパクトが大きくて、漠然と描いていた未来がくっきりとして現実となってきていることを実感すると共に、この未来をどのように捉えて、地方でどうビジネスを行っていくべきか考えるためにも、一連のニュースの意味するところを本ブログで個人的に簡単に整理していければと思います。

 

あれから10年

(画像参照:https://genius.com/

 

Steave JobsによるiPhoneの伝説的なプレゼンテーションから10年。

iPhone一つで世の中がこんなに変わるとは当時はほとんどの人が考えていなかったですよね。実際のところiPhoneが出たときは「それでも日本のガラケー文化は消えない」・・・みたいな話をしていた人も多くいたように記憶しています。10年たった今、iPhoneから新たなビジネスやライフスタイルが生まれてきて、あらゆる業界を変えてきたのは確かです。

 

しかし最近のAmazonGo、Amazon Dash Button、Amazon Alexaに始まるAmazonの革新的なテクノロジーは更にその上をいく破壊力があると思います。

ニュースをそれぞれピックアップし、それがもたらすインパクトについて考えてみたいと思います。

 

AmazonGo「Just Walk Out

 

アメリカのシアトルで従業員専用のコンセプトストアとして始まっているAmazon Go。

専用アプリをインストールした状態で入店し、欲しいものを手に取ったらそのまま清算手続きはまったくせず店舗から出られます。決済は自動的に決済されます。

プロモーション動画を見ているとイメージが分かりますが、コンセプトである「Just Walk Out」のとおり、完全に万引きのようです。

 

圧倒的なプラットフォーマーへ

このフローですごいのは入店から決済までユーザーがすることはアプリをインストールすることだけということ。商品を持ち、購入、決済するまでの全てのフローで、ショッピングにおけるユーザー側の心理的・物理的な障壁を最大限削減しているのです。

そしてこの手のスマート決済で通常考えられていたのは、商品にICタグを付けて・・・とか、自動清算の仕組みをスマートにして・・・という類のアイデアがベースになっていたと思います。

しかしAmazonの回答はまったく別次元。店舗内のセンサーとディープラーニング、人工知能による顧客行動解析により、ユーザーの購買管理をするということです。つまりこれにより商品管理、店舗管理、顧客管理、決済管理を完全にオートメーションで店舗運営をすることが可能な技術が全て実証フェーズに入っているということです。(Amazonは「Amazon Robotics」と呼ばれる自走ロボットが商品の入った棚をピックアップし運ぶシステムで「未来の倉庫」を既に運用しています。)

スーパーのフルオートメーション運営で完全に人間がいらない。

これらはあらゆる技術や運用面での障壁がまだまだあると思いますが、この10年先の未来を完全に見せていると思います。

発想がすごい!

そしてe-コマース領域を超えてWebと実店舗で統合されたショッピング体験を提供できる完全無敵なプラットフォームに進化しています。

 

地方へのインパクト

コストを追求してあらゆる面で効率化を目指すと、多くのスーパーや実店舗がAmazon Goのような形態になっていくと思います。他社も類似技術の導入が進むことにより、一気に無人化したファストフードや低価格店舗が増え、雇用や周辺産業への影響にインパクトがあります。

またAmazonにはAmazonログイン&ペイメントという各ECサイトで新規会員登録や画面遷移をしなくても購買が完了できる便利なサービスがありますが、これと同様あらゆる事業者にAmazon Goのテクノロジーが提供されるようになるとしたら、Amazonは実店舗においても最強のプラットフォームになります。

ほとんどの小規模店舗や低価格路線のビジネスはこのグローバルな戦いと対峙しなければいけなくなります。

参考記事:Amazon Go、年内にベータ公開―アプリ・ベースの食品ショッピング・システムはレジなし、行列なし

 

Amazon Dash Button

 

Amazon Dash Buttonはボタンを押せば注文から決済まで完了するというサービスです。

定期的購入するような必需品を、ワンクリックでショッピングを完結させる新しいショッピング体験を提供します。アメリカでは既に2015年から始まっており、今回日本にも上陸して話題になっています。

 

Amazon Dash  Buttonの何がすごいのか?

Amazon Dash Buttonのヤバさについてはこんなツイートがありました。

 

 

詳しくはこちらのブログを読んでみてください。

 

@tokorotenさんによると、Amazon Dash Buttonがヤバい3つのポイントをあげています。

 

  1. ビジネスモデルからハード設計しているので、チープのデバイスで将来の保守コストを下げている
  2. Amazon Dash buttonの対応商品を見ると、低関与商材がほとんどで、ブランドの広告投入先がテレビCMから、Amazonプラットフォーム上に移動してきている
  3. ドラッグストアより圧倒的に高いが、消費者は「商品が切れている」ということに関心があるので価格の問題ではない

 

極論的な部分もありますが、Amazonができて日本企業ができなかったことがそのまま書かれていると思いました。

 

AWSのIoTプラットフォーム

AmazonはAWS IoT ボタンというAmazon Dash Button ハードウェアをベースにしたプログラミング可能なボタンを発売し、これにより誰かを呼ぶ、知らせる、トラッキングするなどいろんな使い方にカスタマイズすることができます。これは管理されたプラットフォームであり、デバイス同士を安全かつ簡単に接続し、各方面のサービスと連動できるものです。

IoTとはそもそも単体では成り立たないもの。

Amazonは単純にボタンで発注できる機能を作ったわけではなく、消費者の行動を抑え、企業の広告費のチャネルとなり、より多くのデバイスやサービスをAmazonのプラットフォームに集めることに成功していきます。

一連のAmazon Dash Buttonはすごさを見ると、日本のメーカーがIoTにシフトする際の課題が見えます。IoTなら日本のものづくりの技術が活かせると単純に考えがちですが、従来の考え方のままデバイスを作っていてはダメです。IoTはインターネット、ロボット、人工知能、クラウド、ビッグデータ、センサリングなどの広範囲の高度な技術が複合的に組み合わさっており、全体との連携やプラットフォームが機能しないとそのデバイスには価値がありません。

このようにマーケットや消費者をいかに抑えるかというビジネスモデルから作り上げていかなければならず従来のメーカーとはまったく異なるビジネスモデルを求められます。

また「インダストリー4.0/第4次産業革命」が本格的になってくると、生産体制や雇用、社会そのものが劇的に変化するので、日本の多くのメーカーも更に難しい舵取りを求められることでしょう。

 

Amazon Dash Buttonはプラットフォーマーとして勝つための戦略の一つであり、単なるデバイスメーカーとはまったく異なる戦略と新たなマーケット開拓の形です。

 

Amazon Alexa

(画像参照:engadget

2017年1月にLas Vegasで開催されたCES。今年のテーマは多くのメディアにおいて存在感があったのがAmazonのボイスアシスタントAlexa。

2015年にAmazon Echoという既に650万台売れている製品から始まったAmazonのボイスアシスタントサービスですが、CESでは700以上の自動車、スマホ、冷蔵庫、テレビなどの家電製品に組み込まれており、これも既にプラットフォーム化しています。

Fordに搭載されたAlexaの利用イメージ動画が非常にわかりやすいです。

 

他の音声アシスタントと違う点

「近くのカフェを教えて」と聞いた場合、Siriはブラウザを使って候補を画面表示しますが、Alexaは人間に聞くのと同じ感覚で音声案内してくれるところがポイントです。また今後も3rd Party製品が大量に加わることにより、Alexaのできることや機能が充実していき、生活に欠かせないプラットフォームになっていくのではと思います。

 

Amazonはブラウザを消し去る

このAlexaは声だけでニュースを調べたり、いろんなデバイスと連携したり、物を購入できたりします。つまり今までパソコンの電源をつけて、ブラウザを開いて、検索をして・・・という当たり前だった、よく考えれば面倒臭い一連のフローを変えていく可能性があります。

購買時にはGoogleよりもAmazon内での商品検索されることが多くなっているという直近のニュースもあったように、そもそも検索サイト以前にブラウザを通さずに検索するということが当たり前の時代が来るのでしょう。

Amazonはブラウザを使うという発想を捨て、新たなプラットフォームを作り上げており、いつかブラウザを消し去るのかもしれません。

参考:【米国】Googleに替わり、Amazonが検索エンジンになっている

 

Amazonは何を目指しているのか?

Amazonはe-コマース、ショッピング全般に置ける巨大で壮大なスケールでのバリューチェーンを構築しており、今後あらゆる業界に対して牙をむき出し、飲み込んでいくに違いありません。この無敵なプラットフォーマーに対抗できる企業は日本にはありません。日本のECの売上高ランキングでも、8年連続で1位を独走している状況です。世界を見渡すと対抗馬は今はAlibabaぐらいでしょうか。

 

EC市場を独占

実際のところ2016年EC市場の成長率のシェアで、アマゾンは53%と半分以上を占め、アメリカにおけるオンライン購買の43%は、アマゾンのサイト内で行われたというから、すごいことです。おそらく今後日本も同様の状況になるのではないでしょうか。

 

出典:Slice Intelligence

 

Amazonはコマース、流通、ハード、ソフト、生産管理、ブランド、店舗などにメーカー、販売者を巻き込み、消費者の全てのショッピング体験に介在する存在になっています。さらにショッピング体験だけではなくライフスタイルの全てをAmazonの領域でカバーすることも可能です。
 

ジェフ・ベゾスの野望

Amazonの創業者ジェフ・ベゾスが目指すコンセプトは「エブリシング・ストア」。これは「インターネット企業がメーカーと消費者をつなぎ、世界に向けてあらゆる商品を販売する」というもので、ベゾスはこの世界を実現するためにひたすら突き進んでいるのです。そしてSteve Jobsと同様彼の経営手法はすべての人にとって愛されるものではないかもしれないが、激しく世界を変える起業家であり戦略家でありイノベーターです。

 

Amazonは世界をAmazonというプラットフォームの中に取り込み、全ての商品やサービス販売のチャネルになろうとしています。実際に私たちはその恩恵を受けています。都市部であれば注文からたったの数時間で商品が届くのはとても素晴らしいし、地方においてAmazonが便利で生活のインフラになりつつあることや、技術者や企業にとってもサービス開発やシステム運用する際にAWSが重要なツールであること等々。

好んでも好まなくても、私たちは生活の多くの面でAmazonのプラットフォームに依存している可能性があります。そしてAmazonは私たちの生活を便利にするだけではなく、将来は心理的、感情的な部分にも深く関わり情報接触や購買行動の面で影響を与えるでしょう。

 

最後に

Amazonの一連のニュースを聞きながら、10年後の未来にワクワクしたり、不安を感じたりするものですが、今からしっかりと自分の情報に対するリテラシーをあげて、自分で考えたり、10年後のファクト(事実)に備えたアクションをしていくべきでないかと思います。

  

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