「生活のために働く」は間違いではないが、正しくもない

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お金は大事だ。
生活するにもお金はいるし、夢を叶えるために学んだり、どこか異国を旅したり、子供を育てたり、少し心の余裕を持つために美味しいものを食べたり、自分の身体をメンテナンスするにもお金は必要だ。
だから「生活をするために働く」というのは、人が自由に何かするためにはお金を消費する必要があり、その権利を労働することによって手に入れているという意味では正しい。
では一生暮らせるほどのお金を手に入れたら、どうなるのだろうか?何をするにも自由にできるほどのお金を手に入れた人は働かなくても良いわけだし、稼ぐ理由もないのではないか?

実業家はお金のために働いているのか?

実際世の中には一生遊んで暮らせるだけのお金を持っている人がそれなりにいる。
2018年フォーブス世界長者番付によると世界TOP5の”お金持ち”が掲載されている。
1位:ジェフ・ベゾス/1120億ドル(米国/アマゾン・ドット・コム)
2位:ビル・ゲイツ/900億ドル(米国/マイクロソフト)
3位:ウォーレン・バフェット/840億ドル(米国/バークシャー・ハサウェイ)
4位:ベルナール・アルノーとその家族/720億ドル(フランス/LVMH)
5位:マーク・ザッカーバーグ/710億ドル(米国/フェイスブック)
彼らは一般的に働かなくても良いぐらい資産を持っているし、一生遊んでも使い切れないぐらいのお金を保有している。
では彼らは働かないのだろうか?
2018年世界一のAmazonのCEOジェフ・ベゾスは順調にAmazon帝国を築き上げ、宇宙分野にも力を入れ精力的に働く。MicrosoftのFounderであるビルゲイツは現在は私財を投じて発展途上国への支援活動をしている。ウォーレン・バフェットは90近くになると思うが現役バリバリの投資家だ。マーク・ザッカーバーグはFacebookをより巨大化させ、AIやVRなど未来のテクノロジーに事業分野を広げようとしている。
彼らは稼がなくても生活はできるが、働いている。しかもめちゃくちゃ働いている。彼らは一様に倹約家で、ただやりたいことのために時間と資産を使い続けている。
彼らにとって稼ぐとは生活をするため以上の目的があり、稼ぐこと自体が彼らの働くモチベーションではないように思う。

働き方が変わる

もちろん、生活するためのお金が必要なのであり、富を得たり名を上げるために働いている訳ではないという人も多いだろう。
ただ働き方が変わろうとしている現代、AIやロボットが導入され単純な作業や知識を積み重ねるだけの仕事が消えようとしている。そして労働集約型の組織から個々のスキルの連携による共創の時代になり、ただ組織に所属しているからというだけで仕事が与えられるということも少なくなるのではないか。
また働き方が変化し、社会制度も変わる。人生100年時代と言われるよう、人の寿命が伸び、働かなければならない時間も増える。ただしベーシックインカムのような社会保障制度が整備され、働かなくても良い時代が訪れる可能性もある。となると、働くというのはある意味、特権であり豊かさの象徴にもなりうる。

フリーランスの淘汰

私は個人的には完全なフリーランスというのは相当スキルが高くないと、淘汰されると考えている。多くの場合自分のできる範囲での仕事しか受けないし、自由であるからこそ、相当ハングリーに新しいことを吸収する意志と行動力がないと、数年で組織に所属している人とのスキルや経験差が取り戻せないほどに開いているということもよく見ることである。
ただしパラレルワーク(複業)や複数の組織に所属して働くというスタイルはより進んでいくと思う。そしてそれはボーダレスだ。国境を越えた多様な人種の人が往来し競争が高まる。つまりスキルやキャリアの調達は容易であり競争も激しくなる。

自分が成長できる環境を作る

そうとなると最終的に「この仕事をこの人としたい」「この課題を解決できるのはこの人しかいない」というように認識され、選ばれなければ仕事がないということになる。
だからこそ個人は自分の成長に貪欲であるべきだし、成長できる仕事をするべきだ。経営コンサルが銀行員が経営ができる訳ではないのと同様、座学で得られるものあまり血肉にはならない。
実際にやって見るしか経験は積み上がらないし、成長にはつながらない。組織が成長できる場を提供し、人を育成する力があれば良いが、中小企業には限界がある。また大企業であっても単一の組織内だけでは客観性が欠けるので、コワーキングなどの勉強会や多様な人が集まる場に出向くなど、意識的に多角的な視点を持つことが大事だろう。

働くということは投資に近い

生活のために「働く」というのは、発想として時給脳たと思う。労働時間と対価の話であり、自分の時間を資産としてお金に変換しているにすぎない。それ自体が悪いということではないが、これから訪れる働き方の変化を考えると未来がないように思う。あくまで時間を切り売りしているにすぎないからだ。

一番大切なものは「時間」

お金は頑張れば稼げるかもしれないし、多少いい思いもできるかもしれない。ただ全ての人が持っていて誰にも分けられないものは「時間」だ。この時間を常に燃やし続け人は死へと確実に向かっている。つまり時間は有限で、いつか尽きるのだ。それまで築いた財産も家族も失う。
ではその大切な時間を何に使いたいか。家族や友人との時間に使う。それも良いことだが、身近な人との関係だけでは人間の求める社会性への欲求は満たせない。
つまり「働く」ということは社会とのつながりを作る行為だ。

有限な時間を何に使うか?

「働く」というのは必ずしも「社畜」になるという意味ではない。趣味が収入になる人もいるだろうし、好きなことをする時間のために定時で仕事をする、という人もいるだろう。色々あって良いと思う。
ただ先に書いた「選ばれる人」になるには、自分の時間をただ消費するのではなく、投資するという発想が大事になると思う。働くということは自分の時間を投資している、ということだ。しかし投資の仕方が中途半端だとリターンはない。むしろ元本割れすることもあるだろう。自分が「働く」ということによりプロジェクトにどれだけ貢献できたか、インパクトがどれだけ与えられたか価値であり、それが未来の自分への成長につながる。
組織に所属しているのであれば、ただ所属しているのではなくどれかで組織に貢献できたか、自分が「働く」ことでどれだけ組織の成長度が最大になるかどうかと考えて働いているだろうか?
その働きの経験値は決してAIやロボットにはないスキルになるし、組織への投資ではあるが、自分のキャリアへの投資でもある。その実績が新しい仕事を作り出すからだ。

肉体美とキャリア論

サイバーエージェントの藤田さんが2019年の新入社員へ贈ったメッセージが印象的だった。

多くの人が羨む筋肉隆々な人は、間違いなく非常に辛い筋トレを重ね、その結果、立派な筋肉がついています。
それと全く同じで、仕事ができる人は、努力をして、辛い目にも合い、ハードなことを乗り越えてきている結果です。
楽をして得られるものは何もなく、仕事で辛いことがあったり、大変なことが起こるほど、自身にとってのキャリアアップであり、成長に繋がります。
「No Pain,No Gain」という言葉を辛いときに思い出し、自分の成長の糧になっていると思ってもらいたいです。
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個人が選ばれるのようになるには、根性論でとにかく頑張れば良いというものでもない。クオリティや技術力、経験値だけでは差別化できないからだ。
しかし常に成長し変化できる人でないとこれからの時代を生き抜くことはできない。確実に淘汰される人が増えるし、5Gも始まりあらゆるテクノロジーのシナジーが加速し、社会環境が激変するからだ。
その中で自分の能力を生かして、自分が成長できる仕事をするためには、努力と成長するような働き方が大事であることは間違い無いだろう。ぼーっと働いていてはいつか起きるかもしれないミラクルを待つしかない。

情報発信をするべき理由

「この人と仕事がしたい」と思ってもらうには情報発信が不可欠だ。
今や選択肢が多くあるなかで、認知してもらい信用してもらうには、工夫と戦略が必要になるだろう。
多くの人が可処分時間をYouTubeやTwitter、Instagramなどを費やしている。そこで重要なのはクオリティよりも「共感」や「身近」であることだ。
専門性も大事だが、等身大でどんなインプットをしているかのアウトプットも大事だ。つまり自分がどのように成長しているかを見せることだ。そして自分が「働く」時の価値観やモチベーション、集中しているエリアなど、普段感じている課題、気になる社会現象、全てがアウトプットの対象になる。

それですぐに何か起きるということは無いかもしれない。
でも繰り返すが「働く」というのは投資だ。単なる座学は血肉にならない。アウトプットするためにインプットをするのであり、他の人に情報発信できる形になって初めてインプットしたことの価値が生まれる。価値を生み出せる人に情報や変化は訪れる。それが自分にしかできない仕事であり組織にとっても、社会にとっても価値の連鎖を生み出す。それが仕事だ。

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