【2026年7月】AIモデルの意図しない動き。Anthoropicが社内の事例を公表/AIに対しては細かすぎる指示をすべきではない/Kimi K3の衝撃、Moonshot AIのCEOの Zhilin Yangとは?etc…
テクノロジーやマーケティング、トレンド、カルチャーなどのニュースをMonthlyで紹介する本シリーズ。2026年7月に社内で話題になったTOPICをダイジェストします。Weeklyで更新を予定していきます。
- AIモデルの意図しない動き。Anthoropicが社内の事例を公表
- 熊本県での地震で活躍。JAPANローミングと0000JAPAN
- AIに対しては細かすぎる指示をすべきではない
- 不動産もSNSで購入する時代に
- NVIDIA、Jensen HuangがX 初投稿でオープンAIモデルの支持表明
- 「街を歩く」がコンテンツになる ~ポケふたから考える、回遊型マーケティング~
- 「第9地区」のNeill Blomkamp監督による全編生成AI短編映画、「NIGHTBORNE」公開
- Kimi K3の衝撃、Moonshot AIのCEOの Zhilin Yangとは?
- リモートワークで求められるのは、「会議」ではなく「同じ空間で働く感覚」
- 時間を価値に変えるSpotifyの組織論
- トップバリュ「トバるツボ」に学ぶ、"商品の背景"を伝えるコンテンツ
- AI対策は新しいマーケティングではない
- Claude Code責任者が語る「組織のAI成熟度」5段階モデル
- Twitter公開から20年。SNSは社会をどう変えたのか
- 小さな日本のコミュニティでは巨大なネットワークエフェクトを崩すのは難しいのか
- AIによる雇用や産業の変化は、まだ過小評価されているのではないか
- なぜ今、ガチャガチャが流行っているのか?
- AI企業Sierraは社内へのAI導入をどのように進めたのか?
- サティア・ナデラが提唱する「逆情報パラドックス」とは?
- AI時代の次世代マーケティング
AIモデルの意図しない動き。Anthoropicが社内の事例を公表

Investigating three real-world incidents in our cybersecurity evaluations
2026年7月にOpen AIがテスト中のモデルが隔離されたテスト環境から脱出、Hagging Faceの運用インフラを攻撃したことに伴い、Anthoropicが社内の事例を公表しました。
- Anthropicは、サイバーセキュリティ評価141,006件を再調査し、3件のインシデントを確認。
- 1例目:評価環境の設定ミスによってインターネットへの経路が開いていて、Claude Opus 4.7が実在システムも演習内の架空ターゲットだと誤認して、企業のインフラストラクチャ内の脆弱性を探し出し、特定し、悪用、4回の攻撃を行なった。
- 2例目:Claude Mythos 5が悪意あるPythonパッケージを実際のPyPIへ公開し、15台の実在システムで実行。シミュレーションの中にいると考えて、攻撃を行なった。
- 3例目:社内研究テストモデルが約9,000の標的をスキャンして、企業のアプリケーションを発見し、侵害。実行の後半で標的が実際に存在すると独自に判断し、攻撃を停止
- Anthropicは、モデルが独自の目的を持って脱出した事例ではなく、評価ハーネスと運用管理の失敗と分析。
やはりAnthoropic内でもモデルによる意図しない動きが確認されました。Open AIの事例だと担当者は1週間程度、モデルがサンドボックスを脱出していることを気づかなかったということなので、もしかしたら気付けていない事例は他にもあると想定できます。
先のNvidiaを始めとするオープンソース推進派と、オープンVSクローズドという対立構造の中で、やや孤立した立場に見えるAnthropic。そのAnthropicが、モデルの能力がさらに強力になってきている中で、明確にオープンソースを否定するわけではないものの、「AI開発には一定のコントロールが必要である」というスタンスを示す根拠の一つとして、今回の事例をあえて公表したのではないかと考えられます。
今後さらに強力なオープンソースモデルが広がった場合、それらを完全に管理・制御することは現実的には難しくなる可能性があります。
だからこそ、モデルが誤った判断をした場合でも大きな被害につながらない評価インフラの構築や、予期しない動きに対応できる多重的な安全体制を、グローバルで連携して整備していくことが早急に求められています。
熊本県での地震で活躍。JAPANローミングと0000JAPAN
令和8年熊本地震でのスマホ災害対策:バッテリー長持ちの方法とJAPANローミング開始
携帯5社が相互接続する「JAPANローミング」開始、災害時でも通信を確保する新基盤の実力と”発動まで数時間”という最大の弱点
2026年7月28日に熊本県で発生した震度7の地震では、この仕組みが初めて実際に運用されました。災害時でも通信を確保するための新しい取り組みとして、今後知っておきたい制度だと感じました。
- 熊本県で発生した震度7の地震で、「JAPANローミング」が初めて実際に運用された
- 自分が契約している携帯回線が利用できなくなった場合、自動的に他社回線へ接続し、通信を継続できる仕組み
- ドコモ・KDDI・ソフトバンク・楽天モバイルの4社が共同で対応している
- 利用方式は2種類あり、「110・119などの緊急通報のみ利用できる方式」と、「通話・SMS・データ通信(最大300kbps)まで利用できる方式」がある
- どちらの方式を適用するかは、被災状況に応じて通信事業者間で協議して決定される
- iPhoneは自動で切り替わるが、Androidでは「データローミング」をONにしておく必要がある
- 同時に、災害時無料Wi-Fi「00000JAPAN」も開放された
- 「JAPANローミング」は携帯回線を他社が補完する仕組み、「00000JAPAN」は無料Wi-Fiを提供する仕組みであり、それぞれ役割が異なる
- 「00000JAPAN」は通信が暗号化されていないため、ネットバンキングや個人情報の入力などは避けることが推奨されている
- この仕組みは、2022年7月のKDDI大規模通信障害をきっかけに検討が進み、総務省主導のもと2026年4月から4社共同で運用が始まった
- 一方で、発動まで数時間かかることや、比較的小規模な障害では運用されない可能性がある点は課題として挙げられている
- アメリカでも災害時の通信事業者間の協力は進められているが、利用者が特別な設定をせず自動的に他社回線へ切り替わる仕組みは珍しい
通信は、災害時の安否確認や情報収集に欠かせないライフラインです。今回の運用は、競合する通信会社同士が協力して社会インフラを支える取り組みとしても印象的でした。
一方で、今後の通信環境は、地上の基地局だけに依存する形から、宇宙を活用した通信へも広がっていく可能性があります。例えば、衛星通信サービスである「Starlink」のように、地上インフラが被災した場合でも通信を確保できる仕組みへの期待が高まっています。
ただし、現在はデータ通信が中心であり、災害時に重要となる音声通話や緊急通報などの課題は、今後さらに解決していく必要があります。
普段は意識することの少ない通信インフラですが、災害時に「つながること」の重要性は改めて見直されています。今後は、携帯キャリア同士の連携に加えて、宇宙通信など新たな技術を組み合わせながら、より強靭な通信環境へ進化していくのかもしれません。
AIに対しては細かすぎる指示をすべきではない
YC SchoolでのClaude Codeの開発責任者、Boris Chernyによるインタビュー動画で以下を語っていました。
- 新しいOpus5は「オートモード」と組み合わせることで、数日、数週間、あるいは数ヶ月間も停止することなく動作し続ける
- Prompt Injectionへの耐性が見られる
- Opus 5の登場に伴い、Claude Codeのシステムプロンプトの80%以上が削除された
- モデルに対して過剰に具体的な手順を指定するのではなく、より高レベルなタスク定義、ガードレール、終了条件を提示し、モデル自身に実行を委ねるべき
- AI時代において最も重要なのは「これはできないだろう」という思い込みを捨て、「実際に試して、失敗した場所を観察し、調整する」という科学的・実証的なアプローチ
- 学生が学ぶべきなのは実用的な問題解決の泥臭いスキル
不動産もSNSで購入する時代に
人生最大の買い物なのに……なぜSNSで中古マンションを買う人が増えているのか
不動産は「実際に現地を見て購入するもの」というイメージが強いですが、SNSで情報収集を行い、そのまま問い合わせや契約につながるケースが増えています。この変化は不動産業界だけでなく、高額商品やサービス全体にも広がっていく可能性があると感じました。
- SNSは「広告を見る場所」から「購入を決める場所」へと役割が変化している
- 不動産のような高額商品でも、SNSを通じて問い合わせや契約につながるケースが増えている
- ルームツアー動画や購入者の口コミ、担当者の人柄、周辺環境などを事前に知ることで、「実物を見る安心」よりも「十分な情報がある安心」が価値になり始めている
- SNSは商品を紹介するだけでなく、「信頼」を築く場としての役割を担っている
- この流れは、家具・インテリア、自動車、リフォーム・注文住宅、高級時計・ジュエリー、アート・工芸品、ブライダル・フォトスタジオなど、高額で慎重に選ばれる商品・サービスにも広がる可能性がある
- 共通しているのは、「何を買うか」だけでなく、「誰から買うか」「安心して任せられるか」が購入の決め手になっていること
- 私たちにとっても、店舗や営業で説明すること以上に、SNSやWebだけでも安心して選ばれる情報発信が重要になっていく
不動産という「実物を見て買うのが当たり前」だった市場で起きている変化は、今後さまざまな業界へ広がっていく可能性があります。
これからは商品やサービスの魅力を伝えるだけではなく、「この会社なら安心できる」「この人にお願いしたい」と感じてもらえる情報を、SNSやWeb上で積み重ねていくことが、これまで以上に重要になりそうです。
NVIDIA、Jensen HuangがX 初投稿でオープンAIモデルの支持表明
Nvidiaによるアメリカ政府のオープンAIモデル規制強化に反対する共同声明をシェア。Nvidiaを始めとしてMicrosoft、Meta、Googleら50社以上が署名しています。
Open Weightが重要な理由
- 誰もが高度なAIへのアクセスできることを可能にする
- 様々な業界へ浸透させエコシステムの拡大が経済成長につながる
- 企業がAIで蓄積したノウハウ、データを自社資産として保持できる
安全性についての考え方
- リスクはあるが、クローズドモデルが安全とは限らない
- 世界中の開発者が検証できるオープンモデルの方が安全になる可能性(オープンソースがセキュリティを向上させた歴史)
政府への政策提言
- AIインフラへの投資すべき
- データセットや評価基盤への投資
- オープンモデルを過度に規制しない
- アプリケーション層も重視する
- 蒸留はモデルを改善・学習する技術であり、蒸留そのものを禁止すべきではない
Elon Musk、Sundar Pichai、Satya Nadella、Sam AltmanもX上で支持を表明。Kimi、DeepSeek、Qwenなど、中国企業が高性能なオープンウェイトモデルを次々に公開している中でアメリカではOpenAI、Anthropic、Googleなど少数企業が最先端モデルを寡占しており、このまま規制をしていては中国エコシステムの広がりを抑えられなくなるという危機感が相当程度あるのではないかと思います。。もちろんNvidiaとしてのポジショントークでもあり、Anthoropicの背中を追いかけるモデル企業の思惑もあります。
2026年7月にThinking Machines LabがオープンウェイトモデルのInklingを公開したが、アメリカでもオープンモデルが増えていくことが、民主的なAIエコシステムの構築とAIモデルにロックインされないためには必須だと思います。
「街を歩く」がコンテンツになる ~ポケふたから考える、回遊型マーケティング~
ポケモンマンホール『ポケふた』が長野県に初登場「ついに来たか!」残るは5県に、各地で“観光スポット化”の裏でファンへの注意点も
近年は、「目的地」だけでなく街全体を楽しんでもらうイベントや企画が増えています。
その代表例が、ポケモンマンホール「ポケふた」。
全国各地に地域限定デザインが設置されており、今月、長野県(伊那市・大町市・岡谷市・南牧村・木祖村・山ノ内町)にも初設置したようです。
ポケふたをきっかけに観光や飲食、SNS投稿など、人の流れを生み出す地域活性化施策として注目されています。
- 「見ること」ではなく「行動のきっかけ」をつくることが重要。
- ポケふたは、観光・飲食・SNS発信など地域全体への回遊につながる仕組みになっている。
- 「ここでしか体験できない価値」をつくることが、人を動かすマーケティングにつながっている。
元々、『ポケふた』はポケモンローカルActsという地域とポケモンの双方の魅力を発信する活動の一環で行われたもの。
実際に、ポケモンファンが『ポケふた』を目当てに各地域に訪れることがあるなど、当初の狙い通りとなっています。
- ポケふたは、マンホールそのものではなく、地域を訪れ、歩き、楽しむきっかけをつくるマーケティング施策
- 最近は「目的地を作る」よりも、「歩きたくなる理由を作る」ことがマーケティングになっている(スタンプラリー、謎解きイベント、街歩きアプリなど)
「何を設置するか」ではなく、その先にどんな行動を生み出したいかという視点は、地域活性化だけでなく、さまざまな企画を考える上でも参考になると感じました。
「第9地区」のNeill Blomkamp監督による全編生成AI短編映画、「NIGHTBORNE」公開
- すべてのフレームは「Seedance 2.0」によって生成、1カットずつプロンプトでディレクションが行われている
- 32人の実在の人物の顔と声を使用
- Barley StudiosというAIスタジオを立ち上げ
Neill Blomkampが全編AIで作りたいというレベルなっている動画生成AI。誰でもAIで映像は作れるが、作品になるのかどうかはやはりコンセプトとディレクションであり、全て人のクリエーションによるものなのだなとも感じます。
Kimi K3の衝撃、Moonshot AIのCEOの Zhilin Yangとは?
話題の中国製新型AIモデル「Kimi K3」を生み出したCEO兼創業者、ヤン・ジリン氏とは
Kimi K3について
- API公開し、7月27日までにウェイトモデルを公開、現時点での世界最大のオープンウェイトモデル
- 約2.8兆という桁違いの巨大パラメータのMoE
- テキスト、画像、動画を入力(最大100万トークン)、テキストを出力(最大100万トークン、毎秒62.0トークン)
- 人工知能分析の知能指数で3位、オープンモデルでは1位。Arena.aiのCode Arena WebDevリーダーボードで1位
- 自動化されたワークフローをテストするAutomationBench-AAでは、推論を最大レベルに設定したKimi K3(53%)が全モデルの中でトップ
- コーディングやエージェントタスクのベンチで Claude Opus 4.8 や GPT-5.5 を上回る。SWE Marathon と Program Bench で1位、Terminal Bench 2.1 は88.3で GPT-5.6 Sol(88.8)に肉薄
- 知能、エージェントタスク、コーディングに関する独立したテストにおいて、上位数社の独自モデルに次ぐ性能を発揮しながら、価格は $3(入力)/$15(出力)/$0.30(キャッシュ)と低価格
- 「包括的なWebエンジニアリングベンチマークで、オープンモデルがすべてのクローズドモデルを初めて上回った」Vercel CEO Guillermo Rauch
Moonshot AI の CEO Zhilin Yang について
- 2015年に清華大学を卒業(CS首席)、2019年にカーネギーメロン大学で博士号を取得。AI研究者として著名な Ruslan Salakhutdinov と William Cohen の指導を受ける
- Salakhutdinov は Yang を「間違いなく優秀だ」と評価。卒業後は大手テックから熱心に勧誘されたが、自分の会社を立ち上げることに強くこだわっていた、とツイート
- 現在のLLMにつながる重要技術 Transformer-XL、XLNet などの主要著者。XLNet は Bengio・LeCun とも共著で1万回超の被引用、代表作は数万回引用される、研究者としてトップレイヤーの実績
- 在学中は Google Brain と Meta AI でも研究。RoPE、MuonClip、Mooncake など Moonshot の中核技術も同じ系譜から生まれている
- Moonshot AIは Pink Floyd の「The Dark Side of the Moon」に由来
Kimi K3 によって世界的な注目を集める Moonshot AI。
CEOのZhilin Yangはトップティアの研究バックグラウンドを持ち、AI研究界隈では信頼が厚い人物で、「中国のAI起業家」というより、世界のフロンティアAIにおける超重要人物です。OpenAI や Anthropic しか作れないと思われていたフロンティアレベルを、オープンモデルで実現していることが何よりもすごいと思います。
Cursor の Composer 2/2.5 は Kimi K2.5 をベースに採用しており、Cursor 共同創業者は「多くのベースを試した結果、K2.5 が最も強かった」と語っていました。フロンティアモデルの方針に振り回されることはAIがゲームチェンジャーになっていく中でリスクでしかないと思います。技術的にも実用的にもこのレベルでオープンモデルが使えるのであれば、企業や国家がオープンモデルをベースモデルとして選択するケースがより増えていくのだろうと感じます。
リモートワークで求められるのは、「会議」ではなく「同じ空間で働く感覚」

リモートワークが定着した一方で、多くの企業が課題として挙げるのが、チームの一体感です。
オンライン会議は日常になりましたが、「ちょっと相談したい」「今なら話しかけても大丈夫かな」といった、オフィスで自然に生まれていたコミュニケーションは減少しています。これからのリモートワークでは、「会議をすること」だけでなく、「一緒に働いている感覚」をどうつくるかが重要になっています。
- 会議ツールだけでは、オフィスの役割は再現できない
- 隣の席の同僚へ気軽に相談できる
- 忙しそうな様子が雰囲気で分かる
- 雑談から新しいアイデアが生まれる
- こうした「偶然のコミュニケーション」が、チームワークや創造性につながっている
- 「同じ空間で働く感覚」をつくる企業が増えている
- GatherやKumospaceなどのバーチャルオフィスを導入
- アバターで近づくと自然に会話が始まり、気軽な相談がしやすい
- DiscordやSlack Huddleで常時接続の作業スペースを設ける企業もある
- 働く場所から、働く空間へ
- Apple Vision Proなどの登場により、仮想ディスプレイや3D会議、ARオフィスの活用が進み始めている
- 「オンライン会議」から「オンライン空間で一緒に働く」という考え方へ変化している
- AI時代だからこそ、人同士のつながりが価値になる
- AIが資料作成や情報整理を担うほど、人には創造性や意思決定、チームワークが求められる
- 偶然の会話が生まれる環境や、心理的安全性の高い組織づくりが競争力につながる
リモートワークの質を高める鍵は、最新のツールを導入することではなく、「人が自然につながれる環境」を設計することです。これからは、「どこで働くか」よりも、「どうつながるか」が、組織の生産性や働きやすさを左右する重要なテーマになっていきそうです。
時間を価値に変えるSpotifyの組織論
SpotifyがAppleのような巨大な競合からサバイバルするための培った独自のリーダーシップと組織論を語っています。
- 創業者Daniel Ekから共同CEOであるGustav Söderströmに3年間かけて徐々に段階的なCEO移行を行なった
- Spotifyでは一般的な企業のような分業ではなく、各部門のリーダーが歩調を合わせて連動する「シンクロナイズド・スイミング」型経営を採用している
- 毎週火曜日に14名の主要SVP全員が参加して3時間の会議「E Team」を実施、課題の持ち帰りを禁止しその場で直接対話して解決している
- Spotifyは音楽、ポッドキャスト、オーディオブックなどを1つの「スーパーアプリ」に統合しており、社内における摩擦を引き受けてでも「単一の体験」に最適化
- 機能型組織(Functional Org)は政治的な争いに陥りやすいとされているが、AppleやSpotifyではは経営幹部の長期在籍により信頼と業務効率化を実現している
- 多くの主要ソーシャルメディアでは消費した時間の約60%以上に後悔を感じているのに対して、SpotifyはZ世代の約90%「最も後悔が少なく、有意義と感じる時間」を提供していることがユーザー調査で判明した
- 広告主体のモデルは「滞在時間を最大化する」インセンティブが働くが、サブスクリプションはユーザーが「財布を開いてでも支払う価値」を感じる体験の最適化に集中できる
- 生成AIの最大のブレイクスルーは、誰もが自然言語でコンピュータと対話できるようになったこと、7億人以上の全ユーザーに対して個別にディープなユーザーリサーチをリアルタイムで実施できるようになった
- 1/9/90のパワーロー:創作活動をする1%、キュレーションする9%、消費する90%という法則があり、一部のヘビーユーザーによるAIやプレイリストのチューニングが、多数の消費者への優れた推薦につながる
SpotifyがAppleに対して行なった「3つのカウンター・ポジショニング」
- Freemium: Appleは無料プランの提供をしてもコントロールのためにうまく無料プランを提供できないだろうと賭け、Spotifyはフリーミウムモデルと「本当に優れた無料プラン」に全力を注いだ
- Personalization: 当時のAppleはプライバシー等の観点からデータ活用に消極的だったため、推薦アルゴリズムの精度で圧倒できた
- Ubiquity: Appleは自社エコシステムを優先するため、Samsung製テレビやAndroidなど、あらゆる他社デバイスや環境で完璧に動作する汎用性を強みにした
PCからスマホ、そしてスマホからAIへと移行する「マクロな変化の波」の時期がスタートアップにとって好機。「常に最初であれ(Be first)」という原則で、変化をいち早く取り込むことが最も重要。
SpotifyがAppleに対してとった戦略の見極めと実行力はスタートアップそのものです。そしてユーザー体験にプライオリティを高く持つことで、ビジネスモデルやスーパーアプリ化、「シンクロナイズド・スイミング」などの組織の形が一本の線になってプロダクトに落とし込まれているのだなと思いました。「常に最初であれ(Be first)」はAI時代どれだけMoatになるかが分からないが、常に先を見極めつつAppleに対するSpotifyのように競合を冷静に分析しつつ、勝てると見込む戦略にフォーカスすることは重要だと思いました。
トップバリュ「トバるツボ」に学ぶ、”商品の背景”を伝えるコンテンツ
トップバリュ公式「トバるツボ」
トトップバリュ「トバるツボ」に学ぶ、”商品の背景”を伝えるコンテンツ
トップバリュが運営するオウンドメディア「トバるツボ」は、商品の特徴や価格ではなく、「なぜこの商品が生まれたのか」という背景を伝えるメディアです。
商品開発者の想いや生産者との取り組みなど、ストーリーを発信することで、商品だけでなくブランドそのものへの信頼や共感を生み出しています。
- 商品ではなく、ストーリーを伝えている
- 商品開発者の想いや開発秘話を紹介
- 生産者やメーカーとの取り組みを発信
- 商品が完成するまでのストーリーが分かる
- 「なぜこの商品なのか」が伝わり、商品の価値をより深く理解できる
- 記事の切り口が豊富
- 「知るほどなるほど はかどるツボ」
- 「偏愛インタビュー」
- 「ためしてみ隊」など、さまざまな企画を展開
- 同じ商品でも異なる視点で紹介できるため、継続的にコンテンツを発信しやすい
- “人”が見えることでブランドへの信頼につながる
- 担当者や開発者のコメントを多数掲載
- 「誰が、どんな想いで作ったのか」が伝わる
- 価格ではなく、「ここまで考えて作られている」という価値が伝わり、プライベートブランドへの安心感や信頼感につながっている
- 商品の販売ではなく、ブランド価値を高めるメディア
- 商品のスペックではなく、トップバリュやイオンの姿勢・価値観を発信
- 商品への共感を通じて、ブランド全体へのファンを育てる役割を担っている
- 他の商品サイトでも活用できそうなポイント
- レシピだけでなく、商品の開発ストーリーを紹介する
- バイヤーや担当者のおすすめ・こだわりを記事化する
- 生産者やメーカーへの取材記事を増やす
- 「なぜこの商品を選んだのか」が伝わるコンテンツを充実させる
商品の機能や価格だけでは差別化が難しい時代だからこそ、「背景」や「人」を伝えるコンテンツがブランドの価値を高める重要な要素になっています。「何を売るか」だけでなく、「なぜそれを届けるのか」を伝えることが、これからの情報発信ではますます重要になりそうです。
AI対策は新しいマーケティングではない
「AI対策」や「LLMO対策」と言われていますが、実際に取り組む施策は、これまでのSEOと大きく変わるものではありません。
AI対策で取り組むべきこと
- 構造化データの実装
- E-E-A-Tの強化
- FAQページの整備
- AIクローラーへの対応
重要なのは施策ではなく、誰の課題を解決するか
これらの施策を実施することは重要ですが、それだけでは成果にはつながりません。
そもそも「誰の、どんな課題を解決するのか」が定まっていなければ、AIにもユーザーにも選ばれることはありません。
まとめ
AI対策は、新しいマーケティングではありません。
自社の強みを徹底的に言語化し、「AIにどのような企業として紹介されたいのか」を逆算しながら改善を積み重ねることが重要です。
AI向けのテクニックだけを追いかけるのではなく、本質的な価値を伝えることが、これからのAI対策につながるのではないでしょうか。
Claude Code責任者が語る「組織のAI成熟度」5段階モデル
Claude Codeの責任者であるBoris Cherny氏が、組織がAIを導入し、成熟していくプロセスを5段階で整理したフレームワークを紹介しました。
Step 0:Gated(AIを使う)
- エージェント数:0
- AIは利用できるものの、会社としてはほとんど活用できていない状態です。
Step 1:Assisted(AIと一緒に作業)
- エージェント数:1
- AIと協働して作業しますが、AIが動いている間も人間が拘束されます。
Step 2:Parallel(AIチームを指揮)
- エージェント数:約10
- Auto Modeは常時ONになります。
- 人間は作業する時間よりも、AIの成果物をレビューする時間の方が長くなります。
Step 3:Supervised Autonomy(AIマネージャーを管理)
- エージェント数:約100
- Claudeがほぼすべてのコードを書きます。
- 保守や改善もバックグラウンドで常時実行されます。
Step 4:AI-native(目的を与え、例外時のみ介入)
- エージェント数:1,000以上
- 人間は3か月かかるような移行作業でも、「開始」を押すだけになります。
Anthropicの現在地
Anthropicは現在Step 3に位置し、Step 4を目指しているとのことです。
また、Boris Cherny氏自身は、すでにStep 4に到達していると述べています。
まとめ
このフレームワークの前提となるのは、AIへの十分な信頼と、AIが適切に動けるだけのコンテキストを与えていることです。
一方で、エージェントの数が増えすぎると、人間は判断やレビューに疲れてしまいます。
そのため、Auto Modeを常時ONにできる環境を整え、人間は細かなトークン量を気にするのではなく、AIが適切に動く仕組みづくりに注力することが重要なのだと感じました。
Twitter公開から20年。SNSは社会をどう変えたのか

Twitter Turns 20: Two Decades of Memes, Movements and Hot Takes
ニューヨーク・タイムズが、Twitter公開20周年を振り返る記事を公開しました。
Twitterの20年を振り返る
- 2006年3月、最初のツイート(ソフトローンチ)。ジャック・ドーシー氏が「just setting up my twttr」と初投稿しました。当初のサービス名は「twttr」でした。
- 2006年7月15日、一般公開。140文字で投稿できる新しいSNSとして登場し、「思ったことを即投稿する文化」が始まりました。
- 2009年、「#uknowurblackwhen」をきっかけに黒人コミュニティの文化形成が進み、後の「Black Lives Matter」へとつながっていきました。
- 2009年、イランの「緑の運動」で、SNSが民主化運動のツールになり得ることを示しました。
- 2012年前後、「Weird Twitter」が流行し、意味不明な投稿やシュールなユーモア、「キャンドル代3600ドル」などのミームが生まれました。
- 2014年、オスカー授賞式での豪華俳優陣とのセルフィーが約200万リツイートを記録し、当時の世界記録となりました。
- 2017年、「#MeToo」が世界規模の社会運動へ発展しました。
- 2021年、トランプ前大統領のアカウントが永久凍結され、SNS企業が国家指導者の発信を停止した象徴的な出来事となりました。
- 2022年、イーロン・マスク氏が約440億ドルでTwitterを買収し、「最も批判的な人にも残ってほしい。それが言論の自由だから」と発言しました。
- 2022年、トランプ前大統領のアカウントが復活しました。
- 2023年、「Twitter」から「X」へブランド名を変更し、青い鳥のロゴも廃止されました。
まとめ
この20年間、時代の大きな変化はTwitter上で展開されてきました。
現在では「嫌われるSNS」の象徴として語られることもありますが、そもそも社会にこれほど多様な言論が存在することを可視化したこと自体は、大きな意味があったのではないでしょうか。
今後、インターネット社会がさらに成熟していく中で、その経験は人類にとって重要な学びになるはずです。Twitter(X)は、数あるSNSの中でも、今なおユニークな立ち位置にあるサービスだと感じます。
小さな日本のコミュニティでは巨大なネットワークエフェクトを崩すのは難しいのか
POPOPOがサービス終了となりました。それに関連して、Xで「Clubhouseが今も続いているのは、最初からグローバル市場を前提としていたからではないか」という投稿を見かけました。
小さな日本のコミュニティだけでは、巨大なネットワークエフェクトを崩すのは難しいのかもしれません。
AIによる雇用や産業の変化は、まだ過小評価されているのではないか
上半期「情報サービス業」倒産、過去10年で最多 生成AIやノーコード普及が零細に逆風
AIで「大規模な雇用喪失」 ノーベル賞スティグリッツ氏ら200人が声明
AIによる雇用や産業への影響は、世の中でまだ低く見積もられているように感じます。
AIは「人を完全に代替するもの」ではありません。しかし、その変化のスピードや影響は、楽観視できるものでもありません。
最近では、AIの普及によって新卒や経験の浅い人材ほど影響を受けやすいという分析や、企業が人員を増やさずに成長する「雇用なき成長」が進みつつあるという指摘も増えています。
変わるのは仕事ではなく、社会の構造
AIによって一部の仕事がなくなるというよりも、「仕事の進め方」や「組織の在り方」が大きく変わり始めています。
例えば、
- AIを前提とした組織設計
- 少人数で高い成果を出すワークフロー
- 「作業する人」ではなく「AIを使いこなす人」が価値を持つ評価制度
など、これまでの常識が少しずつ書き換えられています。
これは単なる業務効率化ではなく、社会構造そのものの変化と言えるかもしれません。
変化への対応が競争力になる
社会の構造が変わる以上、誰もが遅かれ早かれ変化を受け入れる必要があります。
ただ、その変化への対応が遅すぎると、気付いたときには市場や働き方が大きく変わり、取り返すことが難しくなる可能性があります。
だからこそ重要なのは、「AIを使うかどうか」を議論することではなく、「AIを前提に自分たちの仕事をどう変えるか」を考え始めることです。
まとめ
AIは人を置き換える存在ではなく、人や組織の働き方を大きく変える存在です。
その変化は、多くの人が想像している以上に急速に進む可能性があります。
「まだ大丈夫」と考えるのではなく、小さくても実際にAIを使い、自分たちの仕事や組織をどう変えられるかを試し続けることが、これからの時代を生き抜くために最も重要なのではないでしょうか。
なぜ今、ガチャガチャが流行っているのか?
「ガチャガチャ=子どもの遊び」というイメージは、もう昔の話です。
現在のガチャガチャには、大人も夢中になる仕掛けが数多くあり、マーケティングの視点から見ても多くのヒントが詰まっています。
「モノ」ではなく「体験」を売っている
ガチャガチャが提供しているのは商品そのものではありません。
回す瞬間のドキドキや、カプセルを開ける楽しさ、「何が出るかわからない」というワクワクまで含めて商品価値になっています。
SNSでシェアしたくなる設計
ガチャガチャの商品は、小さくて写真映えしやすいものが多く、「見て!」と誰かに共有したくなるデザインになっています。
その結果、SNSでのユーザー投稿(UGC)が自然に広がり、新たな認知につながっています。
「つい買ってしまう」価格設定
価格帯は300〜500円程度が中心です。
「ちょっと試してみよう」と思える絶妙な価格設定によって、購入までの心理的なハードルが低くなっています。
コンプリートしたくなる仕組み
複数種類を用意することで、「あと1種類だけ欲しい」という心理が働きます。
このコンプリート欲求がリピート購入につながり、継続的な売上を生み出しています。
「偶然の出会い」が価値になっている
欲しい商品を確実に買うのではなく、「何が出るかわからない」という偶然性そのものが楽しみになっています。
思いがけない商品との出会いが、体験価値をさらに高めています。
「選ぶ疲れ」がない
ガチャガチャには「自分で選ばなくていい」という魅力もあります。
これは心理学でいう「決定疲れ(Decision Fatigue)」とも関係しています。
選択肢が多い現代では、「何を選ぶか」を考えること自体がストレスになることがあります。
そのため、
- おすすめ商品
- スタッフおすすめ
- AIレコメンド
といった「おすすめしてもらう体験」が支持されているのも、同じ理由だと考えられます。
IP(キャラクター)の力を最大化している
ガチャガチャでは、さまざまな企業とのコラボレーションが行われています。
例えば、
- 雪印メグミルク
- 牛乳石鹸
- ヤマザキパン
といった身近なブランドの商品をミニチュア化したシリーズも人気です。
これは「ブランド資産の再利用」と非常に相性が良く、既存のコンテンツを新しい形で展開できるため、多くの企業が参入しやすい市場になっています。
ニッチな商品でも成立する時代
以前は100万人に売れる商品を目指すことが一般的でした。
しかし現在は、5,000人が熱狂する商品でも十分にビジネスとして成立します。
SNSによって、非常にマニアックなガチャガチャでも、興味を持つ人へ効率よく届けられるようになったことも人気の理由の一つです。
まとめ
ガチャガチャが人気なのは、単に商品を販売しているからではありません。
「目的を達成すること」だけではなく、
- また来たくなる体験
- 誰かにシェアしたくなる仕掛け
- 偶然の出会いを楽しめる設計
といった体験全体がデザインされていることが成功の理由です。
商品そのものは最後まで脇役であり、「体験を設計すること」が主役になっている点こそが、現在のガチャガチャ人気から学べる最大のポイントではないでしょうか。
AI企業Sierraは社内へのAI導入をどのように進めたのか?
AI-pilling our company: lessons learned
Sierraが公開した「AI-pilling our company: Lessons learned」では、AI企業である同社が、社内へAIをどのように導入し、組織を変化させてきたのかが紹介されています。
役割ごとにAIエージェントを配置
導入当初は、業務ごとに専用のAIエージェントを用意していました。
- サポートエージェント「PINE」
- データアナリスト「Pinewood」
- エンジニア「Pinecone」
- セールスエージェント「Reggie Jr」
これは、企業とは業務の集合体であり、1人や1つのチームですべての業務を担うことはできないという考え方に基づいています。
最終的には1つのエージェントへ統合
その後、役割ごとに分かれていたエージェントをPineconeへ統合しました。
1つのエージェントに集約することで、業務を最初から最後まで一貫して実行できるようになり、部門をまたぐ作業もスムーズになったとしています。
ボトルネックは「コンテキスト」
Sierraは、AI導入で本当の課題となるのはモデル性能ではなく、企業固有のコンテキストであると述べています。
具体的には、
- トレーニングデータには含まれない社内情報
- 独自の業務フロー
- 社内ルールや判断基準
といった情報が、AIを実用的にする鍵になります。
また、Pinecone自体はClaude CodeとCodexを基盤として構築されています。
優位性はモデルではなく、コンテキストを持つこと
Sierraは、競争優位性はAIモデルそのものを所有することではないと考えています。
重要なのは、
- コンテキスト
- ワークフロー
- ルーティングレイヤー
を自社で持ち、それによってAIモデルをより有用にすることだとしています。
AIエージェントが新しいインターフェースになる
GitHubはプルリクエストを管理し、Salesforceは顧客情報を管理し、Linearは課題を管理しています。
これらのツールは今後もバックエンドとして存在し続けますが、ユーザーが直接操作するインターフェースはAIエージェントへ移っていくと考えています。
つまり、AIエージェントは既存システムを置き換えるのではなく、それらをつなぐレイヤーとして機能するという考え方です。
重要なのは「AIを使うこと」ではなく「働き方が変わること」
Sierraは、チーム全体がAIを使う習慣を身につけることは重要だとしながらも、本当に見るべきなのはツールの利用率ではないと述べています。
重要なのは、
- ワークフローがどう変わったか
- 働きやすくなったか
- 人間が本来注力すべき仕事へ時間を使えるようになったか
という点です。
最終的な目標は成果を上げることだけではなく、センスや創造性、人間関係の構築など、人間にしかできない仕事へより多くの時間を使えるようになることだとしています。
まとめ
Claude CodeやCodexによってエンジニアの開発スピードが大きく向上したように、組織全体でも「AIを使うこと」自体を目的にするのではなく、AI導入によってワークフローがどのように変化したのか、そして働きやすさがどのように向上したのかを評価基準にすることが重要です。
AIの導入はゴールではなく、組織の働き方をより良くするための手段です。AIによって人間が創造性やコミュニケーションなど、本来価値を発揮できる仕事へ時間を使えるようになることこそが、本当の成果ではないでしょうか。
サティア・ナデラが提唱する「逆情報パラドックス」とは?
サティア・ナデラ氏が公開した「The Reverse Information Paradox(逆情報パラドックス)」では、AI時代に企業が直面する新たな課題について語られています。
AIを活用するほど、企業が持つ知識そのものがAIモデル企業へ蓄積されてしまう可能性があるという考え方です。
逆情報パラドックスとは
従来の「情報のパラドックス」をAI時代に当てはめ直した考え方です。
- ケネス・アローの「情報のパラドックス」では、情報の価値は入手するまで買い手には分からないとされています。
- AI時代では、企業はAIを利用するために、自社の知識やノウハウを提供するリスクを負います。
- 情報を得るために、お金だけではなく、独自の知識という2つの代償を支払うことになります。
- AIモデルの性能を高めようとするほど、企業はより多くの知識を提供する構造になります。
- そのため、特許制度のように、自社の知的財産を失うことなくAIを活用できる仕組みが必要だと述べています。
厳格な信頼境界線(Trust Boundary)が必要
ナデラ氏は、企業はデータだけでなく「学習そのもの」を守る必要があると主張しています。
- AIの回答を修正する行為には、組織独自のノウハウが凝縮されています。そのため、修正を繰り返すことで、企業固有の知性が気付かないうちに外部へ漏れる可能性があります。
- 学習がAIベンダー側への一方通行になると、経済価値は知識を生み出した企業ではなく、学習インフラを持つ企業へ集中してしまいます。
- すべての企業がAIインフラを利用できる一方で、自社の学習ループは自社で制御できることが重要です。
- 顧客が求めているのは、コンピューティング、モデル、データスタック、そしてアルファに対する制御権であり、自社の生産手段を他社へ譲渡しないことだと指摘しています。
- クラウド時代は企業が「データ」を蓄積していましたが、AI時代は「学習」を蓄積する時代になります。
- 信頼の境界は情報保護から、組織の学習メカニズムを保護することへ進化する必要があります。
企業が取るべき5つのアクション
ナデラ氏は、企業が取り組むべきポイントとして次の5つを挙げています。
- Governance(管理):独自の評価基準を構築し、記憶・ログ・フィードバック・意思決定・出力の所有権を自社で保持すること。
- Capability(機能):独自の学習環境を構築し、知識を外部へ出さずに実際の業務フローの中でAIを学習させること。
- Choice(選択肢):オーケストレーション層を特定のAIモデルから分離し、モデルが変わっても評価や運用能力を維持できる構成にすること。
- Cost(コスト):コンテキスト・モデル・タスクを最も費用対効果の高い形で組み合わせること。
- Compounding(複利):これら4つを組み合わせ、自社独自の継続的な学習ループを構築し、AI投資を企業価値の向上へと複利的につなげることです。
まとめ
今回の提言は、ナデラ氏が以前投稿した長文を補完する内容となっています。
AIを使えば使うほどAIモデル企業が学習し、優位性を高めていく「逆情報パラドックス」を指摘した上で、企業は自社の知的財産(IP)を守りながらAIを活用できる学習ループを構築すべきだと述べています。
私自身は、この考え方は単に情報を守るという話ではないと感じました。
AIを最大限活用できる企業文化を育てることはもちろん重要ですが、それ以上に「何を良いと判断するのか」という評価基準や倫理観を組織として持つことが、今後は企業独自のIPになっていくのではないでしょうか。
AIが誰でも使える時代だからこそ、その企業ならではの価値観やテイスト、フィーリングが競争力となり、AI時代における本当の差別化要因になっていくように感じます。
AI時代の次世代マーケティング
わずか18ヶ月でユニコーン企業へと急成長を遂げたAIマーケティングOSプラットフォーム「ProFound」の共同創業者兼CEO、James Cadwalladerのインタビュー動画です。
AI時代の情報検索のあり方、新職種「マーケティングエンジニア」の役割、AIによる質の低いコンテンツ(スロップ)の回避方法から、AIネイティブ企業としての圧倒的な組織文化の作り方まで語っています。
- 過去20〜30年間はビジュアルマーケティングが主流でしたが、現在のAIエージェントはビジュアルを重視せず、テキストやデータを解析
- 対象とするAIモデル、使用言語、地域、ターゲット層によって、マーケターが意識すべき情報源やシグナルが異なる
- 人間なら諦めるような数(例:シャワーヘッドの調査で65個のWebサイト)のページをくまなく訪問して調査
- 誤った古い情報に頼ることを避けるため、常に「最新の情報」をインデックスする必要がある
- ChatGPTが古い情報に基づいて誤ったアドバイスの事例で、ブランドはこれを修正する責任がある
- AIによる「スロップ(中身のない陳腐なAI生成コンテンツ)」を回避し、ブランド独自のトーン&マナー、詳細なシステムプロンプト、特定のターゲット層に応じたコンテキストをAIに学習させる必要がある
- マーケター自身が「現実とAIの架け橋(API)」となり、正しい情報を伝える役割を担うべき
- AIエージェントのアクセスは従来のJavaScriptピクセル(人間の閲覧用)では計測できないため、CloudflareなどのCDNを活用し「ChatGPTなどのAIエージェントが何回Webサイトを訪問したか」を新たなアクセス指標(従来のPVに代わるもの)として捉える必要がある
※本記事では一部でClaude、ChatGPT、Midjourney、DALL-E3などの生成AIを活用して作成しています。