【2025年11月】AIのスケーリングは限界、再び研究の時代へ/TypeScriptは現在、GitHubで最も使用されている言語 etc…

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テクノロジーやマーケティング、トレンド、カルチャーなどのニュースをMonthlyで紹介する本シリーズ。2025年11月に社内で話題になったTOPICをダイジェストします。Weeklyで更新を予定していきます。

AIのスケーリングは限界、再び研究の時代へ

Open AIのファウンダーの1人、Ilya SutskeverがインタビューでAIモデル開発の現状と課題を語るインタビュー動画を紹介します。

  • 2012年から2020年までは研究の時代、2020年から2025年はスケーリングの時代だったが、現在は「研究の時代」に戻りつつある
  • スケーリング概念は、データが有限であるため、いずれ限界に達する。
  • 今後は、計算資源の利用方法について「最も生産的な方法」を見つけることが重要になる。
  • AIに巨額の投資がされているが、一般の人々の視点からは大きな変化として感じられていない。
  • モデルはバグ修正を依頼すると新たなバグを導入するなど、評価性能とはかけ離れたミスを犯すが、原因の一つは研究者自身がリリース時の評価結果を良くするために、評価から着想を得たRL(強化学習)訓練環境を作ってしまうこと
  • 人間は非常に少ないデータで学習し、環境との相互作用を通じて学習するが、現在のモデルは人間と比較できないぐらい汎化能力が低いことが最も根本的な問題
  • 現在のLLM間の類似性は、すべてが同じデータで事前学習されていることに起因する。異なるRL訓練アプローチが導入されることで差別化が可能であり、多様性が生まれる。同じ考えを持つコピーを増やすことではなく、異なる考え方を持つ人々に価値がある。

Ilyaはスケーリング則などの理論を打ち立てた人であり、現在の生成AIの進化を牽引してきた研究者でもあります。2年後のAGIが実現すると言われている中で、Iliyaがこれからは「研究」の時代になると述べることについては理解できてない部分がありますが、無視できないコメントだと思いました。

そしてモデル開発にも、もっと多様なアプローチの可能性があるというのは、現状の資本力ゲームの計算量とエネルギーを要するモデル開発から、より計算量を効率化し省エネルギーなAIモデルが必要とされる中で、小さい開発チームにも突破口がありそうな気になりました。そして強化学習によりいろんな多様な人たちが関わることにより、新しい時代の新しい可能性のあるモデルが生まれるのかもしれないと思いました。

TypeScriptは現在、GitHubで最も使用されている言語

Octoverse: A new developer joins GitHub every second as AI leads TypeScript to #1

2025年8月、TypeScriptは初めてPythonとJavaScriptを上回り、GitHubで最も使用されている言語となったとコード管理ツールGithubがレポートを公表しました。

  • 1億8000万人以上の開発者がGitHubを利用
  • リポジトリの総数は6億3000万、 2025年には新規リポジトリが1億2100万以上となり、過去最大の年となる
  • TypeScriptとPythonを合わせると、現在520万人以上
  • Pythonは現在、新規AIリポジトリのほぼ半数(582,196件、前年比50.7%増)を占めている

SDKやツールキットの多くがTypeScriptに対応しているため、Webアプリやサーバーレス環境でのプロトタイピングにTypeScriptが選ばれやすいという要因があるようです。

そして多くの開発者がAI関連の開発にシフトしており、多くの企業がAI開発を加速させていることがデータにも表れています。 

AIの利用は拡大し続けているが、主に試験段階にとどまっている

The state of AI in 2025: Agents, innovation, and transformation

マッキンゼーによるリサーチで、生成AIの活用において既に格差が出ているというレポートが公開されていました。

  • 2/3は、組織がまだ企業全体でAI の拡張を開始していない
  • 39%はAIエージェントの実験を開始した
  • 39%はAIの活用は企業全体のEBIT(営業利益)にまだ大きな影響を与えていない
  • 高業績企業の3分の1以上が、自社のデジタル予算の20%以上をAIテクノロジーに投入している
  • 高業績企業の約4分の3が、自社でAIを拡大中、または既に拡大済みであると回答
  • 他の企業では3分の1にとどまっている

企業の8割が「生成AIは役に立たない」と答えている中で、高い業績を上げている企業ほどAIによる自動化が進んでいるということは、活用できている企業とできていない企業の差が大きいことを示していると思いました。

ChatGPTをそのまま使っているだけでは、なかなか業務を生産的にしていくことは難しいかもしれません。AIの進化を傍観しているうちに、取り戻せない差になっていく。これがリアルなデータだとするとかなり未来を選択しなければいけないフェーズに既にいることになると思います。 

AGI時代のスタートアップが考えるべきこと

AnthropicでAIアライメント研究チームのJordan FisherによるYCでのスピーチでいくつか印象的なフレーズがあったので紹介します。

スタートアップ経営のパラドックス

  • 「フォーカス(集中)が全て」それはスタートアップが大企業に打ち勝つための優位性である。しかし、スタートアップ経営のもう一つの事実として「全てにフォーカスしなければならない」

AGIに備える

  • ソフトウェアは完全にコモディティ化する。
  • 2-3年以内にAGIが到来する可能性が極めて高いという事実を念頭に、企業戦略を計画すべき
  • AGIにより労働力が不要になり、資本が資本を生む世界となる。これにより、富の集中が制御不能に陥る可能性がある
  • 人類を超える第二の知性を生み出そうとしている中で、人類を定義し、社会を定義することは極めて重要。
  • 単に消費されるものを考えるのではなく、「社会が必要としているもの」を考えるべき

AGI後の持続的な優位性(モート)を作る方法

  • 困難で、取り組む価値のある問題に挑戦する意欲を持つこと
  • 外部に漏れていない暗黙知
  • 信頼されることで優位性を確立すべき

AGIへの道が見えている中で、直接人間が何かを創り出す、その最後の瞬間に入っている可能性があるのかもしれないと思いました。

サービスがコモディティ化するが、チームの価値、組織への信頼の重要性はより高まっていくことでしょう。だからこそビジネスだけではなく、起業家は社会そのものの在り方を考える必要があるのだと思います。

AIによる拡張性によりソロプレナーやフリーランスのできることも多くはありますが、結局プロダクトそのものより、目指しているビジョンや組織文化に依拠する信頼こそが優位性になるということかもしれません。

何か社会や人類に関わる大きなビジネスやインフラを、1人の人の判断に依存するということは社会的なリスクになるからこそ、組織というのは必要不可欠なのだと思います。

UIに美しさが必要なのはなぜか?

なぜUIに「美しさ」が必要なのか。

デザイナーの村田 俊英氏によるnote記事で、UIの「美しさ」はもはや贅沢品(Nice to have)ではなく、事業の根幹である「信頼」に直結する必須要件だ、というとても共感できた記事を紹介しました。

  • StripeはEメールの文面やUIの「美しさ」を見直しただけで、プロダクトのコンバージョンが20%も向上した
  • BtoBのデジタルプロダクトには「複雑なことを複雑なままデザインしないと、そもそもの課題が解決しない」という特有の難しさがある
  • 「複雑さ」を削ぎ落とさず、それでいて、直感的でわかりやすい体験。そこに「美しさ」が宿る

20年前に比べてあらゆる商品やインターフェースが美しくなってきました。Appleの美しさは、当時は贅沢品だったかもしれませんが、今やユーザーに使ってもらうための第一歩として、まず「美しさ」は必須条件になっていると思います。

「新しいクリエイティブ媒体は最初低品質から始まる」

多くの人にとってAI生成コンテンツの音楽は珍しいものではなくなってきています。一方でAI Slopと言われるように、生成AIによる低品質なコンテンツを揶揄するような風潮もあります。

セコイアキャピタルのジェス・リーは、生成AIによるノイズ的コンテンツをバカにするべきでない理由を、インタビューで以下のように説明しています。

  • YouTubeは、手作り動画から始まったが、時が経つにつれて、クオリティが向上し、信頼性も高まり、YouTubeは世界最大の動画プラットフォームになった。
  • TikTokも最初は素人が踊りを真似る動画から始まり、世界的なエンターテイメントエンジンへと進化した。
  • 些細で低俗に思えるものが、巨大なものになっている。
  • 「AI の低品質のコンテンツ」を批評家がジャンクとして切り捨てるが、多くの場合、AIなしでは作成が不可能な動画が多い。
  • テクノロジーが変化するたびに、新しいクリエイターが生まれてくるが、旧世代は嘲笑する
  • ブロガーは「本物のライター」ではない。
  • Twitterのマイクロブロガーは「本物のブロガー」ではない。
  • YouTuberは「本物の映画制作者」ではない。
  • Instagramのインフルエンサーは「本物のテイストメーカー」ではない。
  • TikTokのティーンは「本物のクリエイター」ではない
  • AIネイティブの世代、ジェネレーターズは世界を撮影するのではなく、アイデア、ムードボード、スクリプト、実写映像をプロンプトや生成AIモデルとブレンドして創造する。
  • 彼らは創造し、リミックスし、再生し、洗練させて新しいものを作り出す

個人的には、まさに「すべては要素に分解され、再合成(REMIXING)される」というケヴィン・ケリーの「〈インターネット〉の次に来るもの」という本で書かれている世界になってきたと感じました。

How Many AI Artists Have Debuted on Billboard’s Charts?

ここ数ヶ月だけでも、少なくとも6組のAIアーティスト、あるいはAI支援アーティストがビルボードの様々なランキングに登場しているとビルボード紙は伝えています。世界が変化している事象さえ見ないで、生成AIコンテンツを批判するだけでは、単なるオールド世代なのかもしれません。

※本記事では一部でClaude、ChatGPT、Midjourney、DALL-E3などの生成AIを活用して作成しています。

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