【2023年10月】Twitter買収から1年、Xは今/Metaの復活 広告好調で売上高23%増加/SHEINの売上はすべて中国国外で発生している/イスラエル・ハマス戦争、Xは偽情報だらけ/スティーブ・ジョブズ×日本の「新版画」の謎etc…

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テクノロジーやマーケティング、トレンド、カルチャーなどのニュースをMonthlyで紹介する本シリーズ。2023年10月に社内で話題になったTOPICをダイジェストします。Weeklyで更新を予定していきます。

▼目次

Twitter買収から1年、Xは今

X, One Year Later: How Elon Musk Made a Mess of Twitter’s Business
Elon MuskによるTwitter買収から1年が経とうとしていますが、現状を調査したデータ会社アップトピアのレポートをご紹介します。

  • ユーザー数:13%減(昨対比)
  • 従業員数:約1,500人(7,500人減)
  • 有料会員数:120万人 (ユーザーの1%)
  • トップ5社の広告主の𝕏広告予算が67%減

買収により縮小していることを記事では示していますが、直近では音声通話とビデオ通話を有料ユーザーに対して導入を発表するなど、かつての発言通りスーパーアプリ化を目指して機能改修や追加を進めているようです。
Twitterというネームバリューを捨てて、Xとなり、「今後は出会いアプリに変わる」というElon Muskの発言もあったようですが、旧Twitterは別のアプリケーションへと進化を続けています。

Metaの復活 広告好調で売上高23%増加

Meta beats on top and bottom lines as digital ad recovery pushes revenue up 23%
Meta社は、3四半期連続で収益が減少した厳しい時期を乗り越え、広告事業の成長により売上高が 23% 増加し、予想を上回る業績を報告したようです。

  • デイリー アクティブ ユーザー (DAU): 20 億 9000 万人
  • 月間アクティブ ユーザー (MAU): 30 億 5000 万
  • ユーザーあたりの平均収益 (ARPU): 11.23 ドル
  • レコメンデーションの改善の結果、Facebookの利用時間が7%増加し、Instagramの利用時間が6%増加
  • 2024年にはAIが最大の投資分野になる
  • Reality Labs部門は、同四半期に37億4000万ドルの営業損失。「拡張現実/仮想現実における継続的な製品開発の取り組みとエコシステムをさらに拡大するための投資により、前年比で大幅に増加する」と予想
  • Metaの株価は今年約150%上昇しており、S&P500の中でAIチップメーカーのエヌビディアに次ぐ2番目の好成績。

2021年のiOS14のアップデート以降、広告精度の低下による減収や広告主離れが起こっていたMetaですが、AIによるターゲティング広告の精度を高めてきた結果が業績回復につながりました。

今後もAIへの投資に一番注力しつつ、メタバース領域へも投資を続けるということで、他の大手テック企業が苦手としているソーシャルをここまで成長させてきたMetaの、10年後の姿に興味が湧いています。

2023年のGDP 日本3位から4位に転落

GDP予測、日本は4位転落 23年にドイツが逆転、響く円安

2023年の日本の名目国内総生産(GDP)が$ベースでドイツに抜かれ、世界3位から4位に転落したというニュースです。主にはこの30年間の低成長が長期化していることが要因です。イノベーションが生まれるような環境づくりや、少子化対策など、国力を上げる抜本的な対策を、より緊急感を持って推し進めることが必要だと感じました。

世界の変化を理解する20のグラフ

世界の変化を捉える 10 のグラフ Part1

世界の変化を捉える 10 のグラフ Part2

広範なテーマで世界がどのように変化しているかを視覚化しまとめた記事の中から、気になったものを紹介します。

  • スマホとソーシャルメディアの普及が十代の精神的健康の悪化と直接的に一致している
  • 女性参加者の94%が 特定の外見をしなければならないというプレッシャーを感じ、そのために90%がフィルターや編集ツールを使用している
  • 過去 30 年間で、親しい友人が 1 人以下の人の割合は、人口の 20% (ほぼ 3 倍)。親しい友人が 10 人以上の割合は、40% から 15% に減少
  • 生徒より教師の方がChatGPTを使用している
  • Duolingoは通知の量を増やすのではなく、タイミング、画像、コピー、ローカリゼーションを最適化することで品質を向上させた
  • この類のイノベーションのほとんどはごく最近に起こったものである
  • S&P 500 企業の売上高 100 万ドルを生み出すために必要な従業員の平均数は、2000 年の 4 名から現在では 2 名に半減、生産性が向上
  • 地球の周りを回る衛星は 7,702 個ある

生産性については、今後AIによりさらに向上し、イノベーションも加速します。あのライト兄弟の時代でも、飛行成功から「1年後」には多くの人が飛行できていました。イノベーションは本当に「瞬く間」になっていくのだと思います。

パディ・コスグレイブ氏がWeb SummitのCEOを辞任

Paddy Cosgrave has stepped down as CEO of Web Summit

Web Summitとはヨーロッパ最大の年次テクノロジーイベントの1つです。10月7日のハマスのイスラエル攻撃を受けて、Web SummitのCEOのPaddy Cosgraveによる一連の発言が問題となり辞任したようです。

  • イスラエルが反撃を計画している際の「非常に多くの西側指導者や政府」のレトリックと行動にショックを受け、「同盟国が犯したものであっても戦争犯罪は戦争犯罪であり、そのありのままを非難されるべきである」と書いていた
  • その発言によりイスラエル国民の一連の怒りの反応を引き起こし、テクノロジーコミュニティ全体の幅広い人々にまで波及
  • 多くのベンチャーキャピタリストや創業者がWeb Summitのイベントで二度と講演しないと誓った

イベントのスポンサーや登壇者である、起業家やVC、金融界には多くのユダヤ系が多く、正論は通じなかったようです。日本にいるとあまり起こらない問題かもしれませんが、グローバル企業を目指す時にはこのような話題に対するスタンスを考えておくことが大切なんだと思いました。

Discord、9か月前に買収した「GAS」をシャットダウン

Discord Shutters Gas, Making It Two in a Row for Gas Founder

 Discordが9か月前に買収したZ世代で話題だった人気SNSアプリ、「GAS」をシャットダウンしたという記事です。

  • GASは10代の若者がお互いを褒め合う人気アプリ
  • 創業者のNikita Bierは匿名ソーシャルアプリ「TBH」の創設者として知られており、2017年にFacebook に買収され閉鎖されている

GASは有料アプリながらアメリカのApp Storeでも1位になり、Z世代で一瞬で広まったアプリです。Nikita Bierは以前にも同様のSNSアプリ「TBH」を作り、Facebook(現Meta)に売却し、その後サービスはシャットダウンされた経験があります。今回もプロダクト開発からスケーリングするまでの、ユーザー獲得手法はSNSを理解しているNikita Bierならではです。

SNSアプリは多く生まれますが、ずっと使い続けられることや、DIscordが求めるサイズでのユーザー市場を獲得し定着させることは難しかったようです。

SHEINの売上はすべて中国国外で発生している

Shein’s head of strategic communications on the company’s ‘on-demand’ business model and moving beyond China

SHEINの戦略コミュニケーション責任者Peter Pernot-Dayがアメリカにおけるローカリゼーションにおける進捗状況と、地政学的な緊張にどのように取り組んでいるか、興味深いインタビュー記事でした。

  • 強制労働、著作権侵害、製品に安全ではないレベルの有毒化学物質を使用しているという疑惑を持たれている
  • SHEINは現在、中国を越えて事業を拡大し、事業を多角化
  • 総面積約 200 万平方フィートの倉庫を持っている
  • 売上はすべて中国国外で発生
  • 一般的には、10,000 件からおそらく 100,000 件の注文が行われるが、SHEINは全世界向けに 100 ~ 200 個の小ロットの注文を受け付ける

今やグローバル企業であるSHEINが100-200ほどの小ロットでも商品の開発、生産をしていることに驚きました。よりパーソナライズされた体験が求められるECにおける、このような柔軟な対応はZ世代をはじめとする消費者に受け入れられている理由だと思います。

AIテクノロジーによりエネルギー消費の大幅増加

The growing energy footprint of artificial intelligence

OpenAIのChatGPTから始まった、AI テクノロジーの急速な導入により、Google などの企業のエネルギー消費が大幅に増加する可能性があるといいます。

  • 2021 年の Google の総電力消費量は 18.3 TWh で、このうち AI が 10 ~ 15% を占めていた
  • GoogleのAIだけでアイルランドなどの国と同じくらいの電力(年間29.3TWh)を消費する可能性
  • ハードウェア効率の向上、モデル アーキテクチャとアルゴリズムの革新により軽減の可能性
  • イーサリアムのマイナーによって以前に使用されていた GPU の 20% が AI での使用に再利用される可能性があり、年間電力消費量 16.1 TWh が AI にシフトする可能性
  • モデル効率の継続的な改善により AI 目的に適したハードウェアの範囲が拡大するかもしれない

現状と明るい展望が示唆されていました。今後より普及していくAI ですが、エネルギー消費の課題はしばらく続きそうです。

イスラエル・ハマス戦争、Xは偽情報だらけ

The Israel-Hamas War Is Drowning X in Disinformation

イスラエル・ハマス戦争のようなニュースに対しては、ネット上で共有されている情報や映像、画像は偽情報が多くなりますが、特にプラットフォームへの変更があったX (旧 Twitter) での規模と速度は前例のないものになっているようです。

  • ジャーナリスト、研究者、オープンソース・インテリジェンス(OSINT)の専門家、ファクトチェッカーらが大量の映像と画像の検証を急いでいる
  • 今はここの危機を取材するのにこれまでで最も困難な時期
  • 今週末は検証済みのコンテンツや一次情報源を X 上で見つけるのは事実上不可能
  • X ユーザーには、ビデオゲームの映像、3年前のシリア内戦のビデオなど、偽造画像・偽装情報が表示されている
  • プラットフォームの変更は、テロリストたちに利益をもたらし、インセンティブのために閲覧数を最大化しようとし、真実ではない可能性のある情報を大量に共有する傾向が高まっている

Xは現在は情報の坩堝(るつぼ)であるが、情報源としての速報性やリーチの価値があるとともに、どのように人々が反応したかや、それによる情報の拡散状況など、ログとしての価値や今後のソーシャルの課題を認識するためにも重要な局面であると思いました。

Apple、世界的なF1ストリーミング権の巨額入札を検討

Report: Apple considers huge bid for global Formula 1 streaming rights

Apple はスポーツ投資として F1 に注目しており、年間約20億ドル相当のオファーを検討しているというレポートがありました、最終的にはAppleがF1レースの独占ストリーミング権所有者となる可能性があるようです。

  • 現在世界的なテレビ放映権から得ている額の約2倍を提示している
  • F1ストリーミング契約が実現するかどうかは未定
  • AppleはNBA、イングランド・プレミアリーグ、NFLサンデーチケットなどを含むさまざまなスポーツリーグとの多くの契約を検討している
  • MLS シーズンパスと MLB フライデーナイトベースボールはすでに配信している

スポーツは熱狂性とコアなファンが集まる持続性のあるコンテンツです。Appleがスポーツというカテゴリーの囲い込みを進めていることは、Netflixのように自社で映画やドラマというコンテンツを作る戦略と対照的で興味深いと思いました。

ノーベル賞にカタリン・カリコ氏ら mRNA医薬、コロナ実用化導く

記事はこちらから
コロナ禍において早期のワクチン開発を可能にした「mRNA」と呼ばれる基盤技術を開発した米ペンシルベニア大のカタリン・カリコ特任教授と同大のドリュー・ワイスマン教授のノーベル賞受賞が決定しました。

  • mRNAのアイデアは1980年代からあった
  • 発表当時は大学や製薬業界の評価は高くはなかった
  • 2020年、新型コロナウイルス禍にモデルナやファイザーがmRNAワクチンの開発を進め、同年12月に世界で初めて実用化
  • mRNAワクチンの市場規模は21年に500億ドル(約7兆5000億円)以上にのぼった

スタートアップ大国であるアメリカですが、一方でR&Dのような開発にもしっかり技術投資ができていてるところがアメリカのすごさだと感じました。

ソーシャルメディアからトップニュースサイトへの流入が激減

Social media traffic to top news sites craters
Similarwebのリサーチによると、FacebookとX(旧Twitter)からの世界トップニュースサイトへのトラフィック紹介はここ1年で激減したということです。

  • ソーシャルメディアからのクリックに依存していたウェブサイトのビジネスモデルが崩壊している
  • 今年は記録的な数のメディアの人員削減
  • ソーシャルメディアトラフィックへの過度に依存

一時期ソーシャルで自社コンテンツをFacebookやX(旧Twitter)などから直接発信・配信する分散型メディアが勃興していましたが、BuzzFeedやViceなどの、軒並み撤退を強いられている状況がグラフからもわかります。
中途半端にソーシャルメディアを運用しても、成果が出にくくなっています。自社ならではのコンテンツの開発を工夫していくしかないようです。

スティーブ・ジョブズ×日本の「新版画」の謎

「スティーブ・ジョブズ1.0」の真実(前編)

NHKの佐伯健太郎記者によるSteave Jobsの日本の新版画とのつながりを探る記事がとても面白かったです。

  • Appleが「マッキントッシュ」を世界にデビューさせた時の、マッキントッシュの画面の絵は「新版画」と呼ばれる日本の木版画だった
  • 特に川瀬巴水の新版画をよくコレクションしていたよう
  • ある美術商からジョブズが購入した新版画の41点のうち、6割である25点は川瀬巴水のものだった
  • Steave Jobsの幼なじみかつAppleの第1号社員のビル・フェルナンデスの祖父が川瀬巴水の木版画をたくさん集めていて、それがSteave Jobsにインスピレーションを与えたかも?

Steave Jobsが子どもの頃から、日本のカルチャーに触れてインスピレーションを受けていたかもしれない、という記事です。Appleの文化を作る上で禅や和食などの日本文化が強く影響を与えていたことはよく知られていますが、より幼いタイミングで、より深いところに日本のアートが影響を与えていたかもしれない、というコラムはとてもワクワクするものがありました。続編があるので楽しみです。

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