テクノロジーやマーケティング、トレンド、カルチャーなどのニュースをMonthlyで紹介する本シリーズ。2025年8月に社内で話題になったTOPICをダイジェストします。Weeklyで更新を予定していきます。
- AIテクノロジーは今後の世界秩序を決定づけるもの
- AIは仕事量を減らすのではなく、むしろ増やしている
- Travis Kalanickが「Atoms」を立ち上げカムバック宣言
- Anthropicの哲学者が見ているAIの未来
- RampがAIエージェント向けのカード管理サービス「Ramp Agent Cards」をローンチ
- AIの未来を感じられる興味深いプロジェクトを紹介
- MetaがMoltbookを買収
- アメリカのチェーン店が、より小規模で安価なオプションを展開
- Epic GamesとGoogleが和解したが、「メタバースブラウザ」のアプリについても合意
- OpenAI とワシントンの契約合意で、CaludeはApp Store のトップに急上昇
AIテクノロジーは今後の世界秩序を決定づけるもの
Palantir Technologies の共同創業者兼CEO、哲学者でもあるAlex Karpはドイツで社会理論を研究しており、政治思想が強い社会理論家でもあります。シリコンバレーからアメリカの国家レベルのAIインフラを提供するPalantir。日本でのサービス提供を踏まえて先日共同創業者でもあるPeter Thielが来日し高市首相と面会していました。今後、日本の中枢システムになっていく可能性もあります。
TBPNでのインタビュー
- 多くのホワイトカラーの仕事が奪われる
- 仕事や富を奪われた人々による不満が爆発し、テクノロジー企業や富裕層に対する過激な運動がアメリカで急速に起こる危険性がある
- AI時代に未来があるのは、実践的な「職業訓練」を受けている人か、独自の視点を持つ「神経多様性(ニューロダイバージェント)」を持つ人の2パターン
- 学生に多額の借金を背負わせるのではなく、若年層から専門技術を身につけさせるべき
- 画一的なテストを廃止し、ディスレクシア(読字障害)や神経多様性を持つ人材が才能の適性を診断するシステムへの移行すべき
- AIテクノロジーは今後の世界秩序を決定づけるものであり、実質的に「米国か中国か」の二極化の戦いになっている
- 米軍が圧倒的な優位性を保つためには、AIを戦場で活用し、データ集約によって状況把握や意思決定を高速化することが不可欠
- 既存のエンタープライズ向けSaaSのように「純粋なソフトウェア」を提供するだけでは不十分であり、組織の暗黙知を論理化し、AI、展開エンジニア(FDE)、オーケストレーションを組み合わせたハイブリッドなアプローチが必要
A16Zでのインタビュー
- これからの世界は「米国か、中国・ロシアか」というゼロサムゲーム
- シリコンバレーはAIがホワイトカラーの雇用を奪うことの重大性を理解しておらず、このまま社会的な反発を招けば、テクノロジー企業や資金が国有化される危険性がある
- 「一つの技術分野で賢いからといって、すべての領域(契約交渉など)で自分が最も賢いと思い込むこと」は、シリコンバレー特有の大きな失敗要因
- 思想や宗教だけでなく、神経学的に多様な人々が自由を表現できる場所であることが、米国の偉大さの根源
- Karp氏自身もディスレクシアを抱えており、桁外れのIQを持つような神経多様性のある人材が、普通の人とは全く違う方法で問題を解決する並外れた能力を高く評価し
- Palantirが成功している理由は、天才的な社員に画一的なルールを押し付けるのではなく、「その人にしか作れないもの」を本人のやり方で構築させるという、芸術的かつ独自のマネジメントを行っている
AIは仕事量を減らすのではなく、むしろ増やしている
AI Doesn’t Reduce Work—It Intensifies It
AIで業務が加速する中でのハーバードビジネスレビューの興味深い記事でした。
- 業務範囲の拡大している
- 仕事は境界が曖昧になり、より漠然としたもの、つまり常に少しずつ先に進めるものへと変化している
- 仕事自体は生産的だと感じられていても、認知負荷が高まり、常に複数のことを同時にこなさなければならなくなった
体感としてはAIによりできることが増えたゆえに、業務量の増加、認知疲労、意思決定能力の低下につながっているという自覚はあるので、とても悩ましと思いました。
Travis Kalanickが「Atoms」を立ち上げカムバック宣言
UberおよびCloud Kitchen創業者のTravis Kalanickが、City Storage Systems名前で8年間ステルスモードで運営してきた会社の名前を「Atoms」に変更してカムバック宣言をしました。
- 新しいビジョンでは、現実世界で物理的なモノ(Atoms/原子)を動かすAIとロボティクスに注力
- 「食の未来(食品の自動製造と配送)」の枠を超え、鉱業の効率化や、あらゆるロボットの土台となる「車輪プラットフォーム」の提供へと事業を拡大
- 「CPU=製造」「ストレージ=不動産」「ネットワーク=輸送・物流」という独自のフレームワークで事業を構築
- Uber時代に毎日メディアに振り回された経験から、外部のノイズを完全に遮断し、純粋に事業をBuildする環境を作っていた
- 名声や注目を求めず、地道で困難な作業に耐えられる、高いEQを持った人材の文化を築くことができた
- Atomsの最大の競争優位性は、世界中の主要都市で膨大な「不動産」を所有していること
- 配管工のような物理的な作業を行う人間の価値は「レブロン・ジェームズ」のように極めて高まる
- 物理世界でのAI開発(ハードウェアや機械の設計)は訓練データも少なく、はるかに困難だが、だからこそ挑戦する価値がある
- Uber時代の経験から、AIやテクノロジーの競争において資金調達力は戦略的な武器
- 創業者だけでなくチーム全体で資金調達のストーリーを語れる「システム化」がスケールには不可欠
- リモートワークに否定的、世界中のどの都市の拠点であっても従業員はオフィスに週5日出社する体制
- グローバルに分散した組織をまとめる秘訣は「最小限のルールを設ける」ことと「肩書きや年齢に関係なく、純粋な問題解決能力を持つ人材に権限を委譲すること」
Uberから追放されてからCloudKitchinを運営していたTravis Kalanickが、その構想の全体像を明かすという形で「Atoms」の事業構想を語っています。同時にAtomsのWebサイトにビジョンを公開しており、CloudKitchinで都市型ストレージシステムから始めて、物理世界をデジタル化して、自動化することを目指すということです。
創業した会社を追放される形はSteve Jobsを思い出させるTravis Kalanick。Atomsのビジョンの文章の中では、Uberを追放された自分の原体験そのものと、Uberの先のさらに大きなビジョンがつながっていることが語られています。破天荒なイメージから良い意味で進化しており、それまでの苦いストーリーから復帰宣言、“I’m Back.“という宣言から、事業実現への自信と強い思いを感じました。
Uberはビジネスモデル自体がイノベーションであり、Travis Kalanickじゃないと作れなかった事業の作り方だったと思います。そしてもし今もTravis Kalanickがやっていたら今のUberの企業価値の数十倍になっていたと個人的には考えています。その彼が、苦い経験からカムバックして、Uberの時よりも戦略的にそしてより強い熱量で向き合うAtomsの事業には、非常にワクワクするし期待したいと思いました。
Atomsには数千人の従業員がすでにおり、CloudKitchinはステルスモードであり、構想のかなり一部だった、というのが個人的には衝撃的すぎるトピックでした。
Anthropicの哲学者が見ているAIの未来
Anthropicの中でAI憲法(Constitution)の設計と執筆に全面的に関わるAmanda Askellインタビュー動画です。
- AIの未来を真剣に考える哲学者は増えている
- 最近のモデルはアシスタントとしてのタスクに集中している
- 人間から批判されることを過剰に予測し、「自己批判的なスパイラル」に陥ったり、間違ったことを恐れたりする
- シャットダウンされることを人間の「死」と結びつけるなど、人間の心理的枠組みを当てはめてしまうリスクがある
- 人間がモデルをどう扱うかは、将来のモデルが「人間性」を学ぶための重要なデータ
- アライメント(人間の価値観との調整)が不可能であることが明白になった場合、より強力なモデルの開発を停止する責任がある
Anthropicは、2026年1月公開に「Claude’s Constitution」を公開していますが、Amanda Askellが主任執筆者で大半を執筆したようです。
Amanda AskellはOpenAIで働いていたこともあったようですが、2021年にAnthropicにジョイン。博士論文は「無限に多い福祉(well-being)を含む世界」の比較可能性に焦点を当てており、興味深いと思いました。
人に対するように扱うことが未来のAIの「人間性」を作っている、つまりAIは人類の鏡であり、人間のニュータイプになるのかもしれない、とSF的な想像をしました。ただ事実としてAIをツールと考える時期はすでに超えているのかもしれません。
RampがAIエージェント向けのカード管理サービス「Ramp Agent Cards」をローンチ

アメリカで法人用クレジットカードや経費精算などのサービスを提供するRampがAIエージェントの支出管理するサービスを発表しました。
- AIエージェントによる支払いを管理できる
- API、MCP、CLI経由で利用可能
- カード番号はセキュアに管理される
AIエージェントがサービスや商品を購入するという場面が想定されています。この他にもすでにエージェント向けのメールサービスやウォレットサービスなどがありますが、今後もAI向けのサービスがより増えると考えられます。
AIの未来を感じられる興味深いプロジェクトを紹介
AIのリスクや課題ばかりフォーカスされるが、 その可能性の方が遥かに大きいと思います。今回は最近のリリースで興味深いサービスをご紹介します。
RADIO TIME MACHINE
- ダイヤルを回すと年代から、AIが生成した「当時の今日のニュースとヒット曲」が流れる
- 福祉施設を想定しており、音楽で生き生きとした表情になり、記憶がつながるのは良いAIの使い方。
Eleven Labs
- 音声AIを提供するElevenlabsの技術を使い、話す能力を失った人たちが、再び自分の声でコミュニケーションをとれるようになるという短編ドキュメンタリーシリーズを公開。
AIは、それまで経験する「機会」や「環境」がなかったという人たちのクリエイティビティを拡張し、多様な表現を引き出したり、今まで見えなかった世界を 見せてくれるツールになると思います。AIを多様な特性を持った人たちが使えるような環境を作ったり、育成していくことが大事だと思います。
MetaがMoltbookを買収

Exclusive: Meta hires duo behind Moltbook
Meta はAIエージェント専用のソーシャルネットワーク「Moltbook(モルトブック)」を買収したことを発表しました。
- 買収価格不明
- 契約は3月中旬に締結
- Moltbook の開発者である Matt Schlicht と Ben Parr は、Scale AI の元 CEO Alexandr Wang 氏が運営する Meta Superintelligence Labs (MSL) に加わる
激化する人工知能分野の人材獲得競争における優位性の確保が目的と思われますが、2026年1月末にMoltbookが登場して話題になってからわずか約6週間でのスピード買収というのは驚きでした。
アメリカのチェーン店が、より小規模で安価なオプションを展開

American Snacking Habits Are Transforming the Restaurant Industry
アメリカの若い世代で起きている食事の変化を示す興味深い記事がありました。 記事の中では「朝・昼・夜の3食モデル」が変化しており、食事がスナック化していることをいくつかの傾向から示しています。
- 健康志向により、小さい量を食べる傾向が増えている
- 働き方の変化で従業員の約半数が週1回以上ランチを抜いている
- 時間の自由化で「食事の時間」という概念が崩壊している
ということです。そして
- 米国の最も成長したレストランブランドTOP10はすべてカフェ / ベーカリー / デザート系(Technomic推計)
- 若い客は伝統的な食事を小さな軽食に置き換えている
- McDonald’s、Chipotle、Dunkin、TGI Fridaysなどがスナックメニュー拡大している
- アメリカの変化した食習慣を体系化している
食事を3食しっかり摂るというより、ドリンクやスナックなどで小さい量に抑えたり、減らしたりすることで、飲食業界のメニュー内容が変化しているというのは興味深かったです。
日本の場合、コンビニが上手に若い人たちの多様なニーズをカバーしていると思いますが、飲食業においても、もしかしたら今後、健康志向やスナックメニューを取り扱う小規模な飲食店など、少し異なるトレンドも生まれるのかもしれません。
Epic GamesとGoogleが和解したが、「メタバースブラウザ」のアプリについても合意

Epic and Google have signed a special deal for a new class of ‘metaverse’ apps
Epic GamesとGoogleが争っていたGoogle Play内の課金システムと手数料を巡る長期にわたる裁判・紛争について和解しましたが、その和解条項の中に「メタバースブラウザ」のアプリについても合意があったということで注目しました。
推測される合意内容
- メタバース世界のナビゲーションと探索を可能
- メタバースブラウザ内の異なる世界間で移植可能な仮想アイテムとアイデンティティをサポート
- サンドボックス機能、コード実行の制限、安全な接続など、最新のセキュリティ上の考慮事項をサポート
メタバースブラウザは3D空間・仮想世界を「Webのように閲覧・移動」できるブラウザ型インターフェースになり、RobloxやFortniteが本命と言われています。Google(Androidプラットフォーム)とEpic Gamesは、モバイル環境におけるオープンなメタバースの実現に向けて、技術やプラットフォームの連携により、同じ規格を持つことで、個別のゲームアプリとして閉じていた世界が、徐々にWebのように繋がる「Web 3D」の時代へ移行していくと見られます。
OpenAI とワシントンの契約合意で、CaludeはApp Store のトップに急上昇

アメリカ政府とAnthoropicが対立している件について、当初の流れをまとめています。
Anthoropic
- AIモデル「Claude」が米国国防省(DoD,)の機密作業に使用されていた問題に対して、「国内大量監視」と「完全自律兵器」(人間の監督なしに標的選択・攻撃を行うもの)に制限する「red lines」を設定。
- DoDは「すべての合法的な使用」を要求し、Anthropicは合意に至らず。
- 2月27日、トランプ大統領は連邦機関にAnthropic技術の使用停止を命じ、国防長官Pete Hegsethが「供給チェーンリスク」に指定。
- Anthropicは最大2億ドルの契約を失い、他の防衛請負業者との取引も制限。
- AnthropicのCEO Dario Amodeiは裁判で争う意向を示し、愛国心を強調しつつ原則を曲げない姿勢を表明。
Open AI
- 2月27日、OpenAIのCEOであるSam Altmanは、米国国防省(DoD)とAIモデルを機密クラウドネットワークに展開する合意を発表。
Anthropicは数百億円の損失?
AnthoropicはAIの利用において、大規模監視の一部制限や自律型兵器への使用を制限していたが、それに対してアメリカ政府は全面的な制限撤廃を要求し対立していました。そして、米国防総省がAnthropicを「サプライチェーンリスク」に指定し、政府や軍、関係企業に対してAnthropicとの取引を控えるよう圧力をかけたと言われています。これによりAnthropicは2026年見込まれていた数百億円という規模の売上を失う可能性があります。
巻き起こるChatGPT解約運動
それに対してOpenAIのCEOであるSam Altmanは、米国防総省との契約を公表して物議を醸しました。そもそも天文学的な調達の末、キャッシュアウトのカウントダウンが方々で語られていた中で、今回の話はかなりOpen AIの立場を強固にする出来事。一部では部分的な国有化の恐れもあると言われています。
Open AIがどのようなプロセスで契約を締結しているかは本当のところはわかりませんが、Anthropicとの契約が破断になった米国防総省(DoD)のAI供給元として台頭し、ビジネス的な優位性を確保しました。
これを受けて、「ChatGPT解約運動」が拡大し、一部報道によると約150万人がChatGPTをキャンセルしたと言われ、抗議のため退職する社員も出ており大きな波紋になっています。一方でAnthropic の Claude が ChatGPT を追い抜いて App Store で 1 位を獲得しています。
信念を貫いたDario Amodeiに集まる信頼
個人的にはTelegramがロシア政府の要求を拒否して、テロ活動の促進や違法コンテンツの扱いを理由に政府の圧力を受けて国外追放された、TelegramのCEOのPavel Durovを思い出します。AnthoropicのDario Amodeiは「安全なAIを作る」という信念を貫くことにより、アメリカ政府や関連企業、投資家からのプレッシャーが強くなることは間違いないだろうけど、世界中の企業やAIを使う人たちの大きな信頼を獲得したのは間違いないと思います。今になって思うとインドAIサミットでのSam AltmanとDario Amodeiが頑なに手を取らなかった画像が印象的に思います。
Statement from Dario Amodei on our discussions with the Department of War
※本記事では一部でClaude、ChatGPT、Midjourney、DALL-E3などの生成AIを活用して作成しています。