
【2025年9月】 AI時代にデザイナーにとって必要なスキルとは?/マーク・ザッカーバーグが描く「スーパインテリジェンス」/Open AI、ChatGPTの利用状況に関するリサーチデータを公表 etc…
テクノロジーやマーケティング、トレンド、カルチャーなどのニュースをMonthlyで紹介する本シリーズ。2025年9月に社内で話題になったTOPICをダイジェストします。Weeklyで更新を予定していきます。
- Anthropic の Claude Code のデザインリードである Meaghan Choi 氏へのインタビュー
- AI時代にデザイナーにとって必要なスキルとは?
- Ray-Banスマートグラス×AI時代、マーク・ザッカーバーグが描く「スーパインテリジェンス」
- NVIDIA、Intelへ50億ドルの投資、データセンターなどの新技術で協力
- Meta、Ray-Banスマートグラスをアップデート
- Open AI、ChatGPTの利用状況に関するリサーチデータを公表
- AIファースト企業とは?
- Youtube、多言語音声の提供を拡大
- AI導入が若手雇用を直撃 ― 経験豊富な人材にシフトする労働市場の現実
- 「プロダクト中心」から「ジャーニー中心」へ 、 組織変革を導くデザイン手法
- LayerX、シリーズBで150億円調達!リードにTCV
- Windsurf買収の舞台裏から見る、スタートアップ経営と未来のエンジニア像
- Airtable の組織全体を AI 向けに再構築した方法
Anthropic の Claude Code のデザインリードである Meaghan Choi 氏へのインタビュー
Anthropic の Claude Code デザインリードである Meaghan Choi 氏へのインタビュー動画をご紹介します。AIによりデザイナーが、バイブコーディングによって今までの業務範囲を越境していく中で、自身のワークフローを通じて、デザインからコードまでを実際にどうつなげていくかを述べています。
- Anthropicでは「誰でもコードを書くことができ」、コラボレーション環境であるため、役割は重要ではない
- 以前はFigmaモックをエンジニアに渡していたが、今は、自身が作成したドラフトPR(Pull Request)と、達成しようとしたことの説明を渡す
AI時代の先端にいる企業の中で、変化する働き方に柔軟に対応する姿勢と試行錯誤する様子が、印象的でした。
AI時代にデザイナーにとって必要なスキルとは?
AIを活用したウェブサイト制作ツールのFramer の共同創設者 Jorn van Dijk のインタビュー記事。Web制作に関わるAIツールを開発している彼が考える、AI時代にデザイナーにとって必要なスキルは、主に以下の点です。
- センス(Taste) を磨くこと
- 品質(Quality) を重視すること
- ユニークさ/個性 を持たせること
- ブランドとの結びつき を強くするこ
- ハードスキル を基本に戻して鍛えること (“back to the basics”)
- 実践量を増やすこと(モックアップをたくさん作る、アイコンを描く、ロゴを描く、など)
「基礎力」や「センス・独自性」が差別化の鍵と述べており、AIが90点の正解を作ってくる中で、文脈を理解し、表現したい世界観を思考して判断する人間に求められるのは、当たり前すぎるそして普遍的なスキルでした。
しかしAIに代替されていく中で、(日本では特に)ビギナーにとってそれを養う機会や品質を高めるためのフィードバックの場が少なくなっていくことが懸念されます。
Ray-Banスマートグラス×AI時代、マーク・ザッカーバーグが描く「スーパインテリジェンス」
MetaのMark Zuckerbergが、AIに賭けるMetaの計画について語っています。
- Metaは2028年までに約6,000億ドルを投資する計画
- AIとスーパーインテリジェンスを「我々の生涯で最も重要なテクノロジー」であり、このフロンティアにいることが極めて重要
- スーパーインテリジェンスが可能になるのが3年後であるにもかかわらず、インフラ構築を遅らせて機会を逸するリスクの方が、積極的に投資しすぎて数千億ドルを「誤って使ってしまう」リスクよりもはるかに高い
このAIのビッグウェーブに対して国家予算並みの投資を行うMeta。ファウンダーだからこそ、リスクを取らないリスクの方にフォーカスできると感じました。
過剰に見える予算ですが、AIが人類に強いインパクトを与えるものだ、という認識とそこへの執着心が表れていると思います。中国も総力を上げてAI開発に注力して一定の成果を上げてきていますが、本来は日本も国家予算を上げてAI分野を全力で突っ込むべきだと思いました。
NVIDIA、Intelへ50億ドルの投資、データセンターなどの新技術で協力

Nvidia to Buy $5 Billion of Intel Stock as Part of Chip Collaboration
NVIDIAは、Intelへ50億ドルを投資し、データセンターおよびPC向けの新技術で協力する計画を発表しました。
Intelは日本でも「インテル入ってる?」でもよく知られていますが、2024年には世界半導体市場シェアにおいて、Intelは7.9%で2位の地位を維持していルものの、AI分野では明らかに出遅れていました。
今回のNVIDIAの発表は、競合関係にあったIntelに対し戦略的出資を行う点で、AI時代における半導体業界の勢力図を書き換えるものです。加えてIntelにとってもAI分野に参入するための「ゲームチェンジングな機会」です。個人的にはパソコンが普及したことにより繁栄したIntelでしたが、一つの時代が変わったこと、栄枯盛衰を実感させるニュースでした。
Meta、Ray-Banスマートグラスをアップデート
Meta Connect 2025: the 6 biggest announcements
Meta Connect 2025の中で、Ray-Banスマートグラスをアップデートしたことを発表しました。実際のデモがARで行われ、かなり実用的な形で印象です。
未来的なデバイスになりそうで、スマートフォンに次ぐデバイスはスマートグラスかもしれない、と感じさせるデモでした。
またスマートグラスのUIデザインがAppleの「Liquid Glass」と同様に、全体的に透明感のあるデザインになっています。いずれもARにおいて、デジタル情報とリアルワールドのシームレスな融合し、ユーザー体験を最適化するためのデザインになっています。一部で視認性の面で否定的な声も聞かれますが、今後どのようにユーザーに受け入れられていくのか、注目しています。
Open AI、ChatGPTの利用状況に関するリサーチデータを公表

How People Use ChatGPT
Open AIは、ChatGPT がどのように使われているかのリサーチデータを公表しました。
- 2022年11月に一般公開1年後には 1億人以上のWAU。2年後で約3.5億人。2025年7月には7億人をこえ、これは世界の成人の約10%にあたる。
- 2025年6月には仕事関連が約 27%、非仕事関連が約 73%と非仕事(non-work)用途のほうがより速く成長
- 2025年7月時点ではGoodがBadの4倍以上。
- ユーザーの教育レベルが高い人ほど、仕事関連利用の割合が高い
- 中所得国(GDPが低い国)での成長率が高い。
ChatGPTの衝撃から3年弱ですが、いかに多くの人が活用しているかわかるデータでした。また個人の利用が多くなってきていることも印象的です。
AIファースト企業とは?

ヤコブ・ニールセンによるAI時代にて、既存の事業をAIファーストへとシフトするための指針となる記事。
- AIネイティブ企業とは、製品、業務、そしてビジネスモデルが最初から根本的に人工知能に依存している企業
- AIファースト企業とは、あらゆる活動にAIを統合することを優先する、典型的なレガシー組織
- AIフォワードとは、個々の従業員やチームにAI導入を委ねている企業
- UXの仕事の多くは、インタラクションの微調整
優れたAIファースト企業とは?
- あらゆる意思決定ループにAIを活用
- 人間は定型的な作業をしない
- 既に従業員にAIアシスタントを提供している
2030 年の AI ファーストの企業
- 人員は少なく、AIを重視する
- AIが自律的に製品の設計と改良を行う
- ハイパーパーソナライゼーション
今やITを使っていない企業はいないので、多くの企業がIT企業であると言えます。同様にAIにおいて今後10年、どこかの時点でどんなビジネスでもAIを取り入れることになると考えられます。そして多くの企業がいち早くAIファーストレベルを見据えていくことになります。2-3年で登場すると言われる次世代AIが出てくるタイミングが、一つの分岐点になりそうです。AGIまたはASIと呼ばれるAIによりさらに世界は加速することになります。ITを導入しただけではデジタルシフトできないように、AIを社内に導入するだけでは、AIファーストとは言えないことがこの記事では分かります
一方で人材採用についてはAIファーストになればなるほど、相対的に企業にとって人の価値はより高くなるはずです。仕事を失う人はいるかもしれませんが、AIに代替できない仕事ができる人材に対して、より企業がコストを払う、そのような二極化が進むと思われます。
Youtube、多言語音声の提供を拡大
Unlock a world of viewers with multi-language audio
YouTubeは、多言語音声機能を配信者向けに提供を開始しました。これによりクリエイターは動画をアップしてすぐに、視聴者の言語でその動画を届けることができるようになります。
- 複数言語ので配信しているクリエイターの総視聴時間の 25% 以上が、動画の主要言語以外の言語での視聴によるもの
- 多言語音声トラックの使用により視聴回数が3倍に増加した事例もある
- MrBeastやマーク・ローバーなどのクリエイターは、新たに何百万人もの視聴者にリーチしている
自分のクリエイティブをより多くの人たちに届けたいと考えるクリエイターにとって、YouTubeは文字通り世界にアクセスできるツールになります。
AI導入が若手雇用を直撃 ― 経験豊富な人材にシフトする労働市場の現実

Generative AI as Seniority-Biased Technological Change: Evidence from U.S. Résumé and Job Posting Data(ハーバード大学論文)
Canaries in the Coal Mine? Six Facts about the Recent Employment Effects of Artificial Intelligence(スタンフォード大学論文)
AIは、若い従業員と年配の従業員の価値をより経験豊富な従業員に有利に変え、結果として新卒者の就職機会が減少しているというデータが、ハーバード大学とスタンフォード大学いずれのレポートでも分析されていました。
- ハーバード大学
- AIを導入した企業では、ジュニア層の雇用が非導入企業と比較して大幅に減少。
- ただし、若手の離職が増えたわけではなく、新規採用の鈍化が主因。
- 一方で、シニア層の雇用はむしろ増加しており、AI導入によって経験や判断力を持つ人材の価値が高まっている。
- スタンフォード大学の研究結果
- AIの影響を強く受ける職種では、22〜25歳の若手労働者の雇用が企業レベルのショックを調整後も相対的に13%減少。
- 雇用減少は特に「AIが代替しやすい業務」に集中。
- 若手にとってAIは「キャリア初期の学習・経験の機会」を奪う可能性がある。
AIは労働市場の構造そのものを変えています。若手人材はこれまでのように「ポテンシャル採用」で企業に入るのが難しくなり、経験や専門性をいかに早期に築けるかが重要な課題となりそうです。
「プロダクト中心」から「ジャーニー中心」へ 、 組織変革を導くデザイン手法

ジャーニー中心のデザインから得た教訓:文化の変革からプロセスのガバナンスまで
ジャーニーマネジメントとは、ジャーニー中心のデザイン運用を採用し、継続的な調査・測定・最適化を通じてジャーニーのエクスペリエンスを管理することで、複数の企業が カスタマージャーニー(顧客の体験の流れ)を中心に据えたデザイン運用(ジャーニー中心のデザイン) を導入する過程で得られた学びを共有してくれています。
- ほとんどの企業がプロダクト中心の考え方で体験デザインに取り組んでいる
- ジャーニー中心のデザインにより、カスタマージャーニーを軸に据え、社内の部門横断的な視点が社内の変革につながる
- チームで協働するということは、他の業務領域からリソースを借りることを意味する。リソースの奪い合いが生じる可能性がある
- ビジネス成果に基づいて、デザイン上の判断を明確に説明することで、企業はジャーニー中心のデザインを戦略的ツールとして活用できる
- 大きな構想を描きながら、既存の制約の範囲内で運用していくバランス感覚が求められる
事業部を横断して、顧客体験にフォーカスすることは、今後より重要な経営課題になると考えています。モノもサービスもコモディティ化する中で、差別化するものはそれしか無くなっていくからです。
LayerX、シリーズBで150億円調達!リードにTCV
Layer XがシリーズBで150億円を調達すると発表しました。アメリカのトップTierであるTCVをリードに迎えた投資家が参加し、同社は2030年までにARR1000億円を目指すとしています。
- 資金調達:シリーズBで150億円を調達、累計282億円に到達。リード投資家は米TCV。
- 採用強化:2年半で従業員を1000名に拡大し、生産性も2倍を目標。AIは「人の生産性を増幅する存在」と位置づけ。
- 報酬還元:生産性向上を従業員に還元。成果に応じ報酬を増額し、営業職は最大年収1.5倍へ。
- AI投資と目標:AIエージェント事業に集中投資。2030年にARR1000億円(うち500億円をAI事業で)を掲げる。
- 成長実績:2026年度目標だったARR100億円を前倒しで達成見込み、日本SaaS最速記録。
今回は大型資金調達であることや、シリコンバレーのトップVCの一つであるTCVの参画は、日本のスタートアップにとっても刺激的なトピックでした。今後の成長にも期待です。
Windsurf買収の舞台裏から見る、スタートアップ経営と未来のエンジニア像
StripeのJohn CollisonによるCognitionのCEO Scot Wuへのインタビュー動画。
- AIコーディングツールが未来において時代遅れにならないと考えている、現実世界のソフトウェアエンジニアリングは非常に複雑でモデルの性能向上だけではカバーできない
- スタートアップは成熟して既成の「プレイブック」が増えたことで、直感よりも論理的なアプローチが主流になり「マネーボール化」している、でも「第一原理思考(first principles thinking)が経験に勝る」は依然と真実。
- 2〜4年後には、ソフトウェアエンジニアの主なインターフェースはコードからコンピューターへの指示に変わると予測
- ソフトウェアエンジニアの数は増加すると考えている
- Cognitionの従業員には、会社はまだ初期段階なので、不確実性を受け入れ、毎週異なる課題に取り組む意欲を持ち、多くの時間を費やすように求めている
- 中核となるエンジニアリングチームは、少人数で精鋭、当初19名、Windsurf買収後30〜35名。35人のうち、21人が元創業者で創業経験者が多いことが特徴
- Windsurf買収について、GoogleがWindsurfを買収するというニュースが金曜日に報じられた際、金曜日の夜にWindsurfと連絡を取り、買収するなら月曜日の朝までに完了しなければならなかった
スタートアップ感あふれる、Windsurf買収のエピソードが興味深かったです。あとやはりAIというホットトピックのトップランナーはみんなめちゃくちゃ頭がいい!という凡人の感想を思いました。
Airtable の組織全体を AI 向けに再構築した方法
ノーコードプラットフォームAirtableの共同創業者兼CEOであるHowie Liu(ハウィー・リウ)によるインタビューがあり、AIによる組織変革の最前線を知ることができる学びの多い内容内容でした。
- CEOは「IC CEO」になるべき。自らコードを書き、物事を構築し、イニシアチブを主導するべき。
- AIがパラダイムシフトであるため、すべてのソフトウェア製品は「再創業されなければならない」
- 「もし同じミッションを持つ新しい会社をゼロから設立するとして、完全にAIネイティブなアプローチを用いてそのミッションをどのように実行するか」と考えるべき
- Airtableは機能別に組織されていたが、2つのグループに再編成。1つは、毎週大胆な製品リリースを行う素早い思考のAIプラットフォームチーム、もう1つは、慎重かつ長期的なインフラ構築に取り組むスロー思考のグループ。
- AIツールで「遊ぶ」ことが必須。従業員に1週間すべての会議をキャンセルして実験するように指示した
組織全体で変化することは難しいですが、AIのパラダイムシフトはインターネットの時よりも進化の速度が段違いに速いです。変化しなければ確実に生き残れません。経営トップがファウンダーモードで変えていくしかないと感じます。Pixel10を見てもGoogleも死に物狂いで「コードレッド」でAIにシフトした結果、Googleにしか作れないものになっています。ShopifyやDuolingo、Boxなどもトップ主導でAIにシフトしています。
ダニエル・カーネマンの『Thinking, Fast and Slow』に触発された、「速い思考」と「遅い思考」のチーム構造も、意思決定の質とスピードを最大化することを目指した、一方に偏らない長期視点の組織構造で参考になります。
※本記事では一部でClaude、ChatGPT、Midjourney、DALL-E3などの生成AIを活用して作成しています。